概要
年のはじめのほうに十二国記を読み進めていたのだけど、中断しちゃってたんだよな。
続きを読んでいく。サマリと感想を書く。
サマリ
- 普白 (フハク) 38年。恭国 (キョウコク) でのこと。先王崩御から27年、国は荒れていた。
- 首都の連檣 (レンショウ) の豪商である相如昇 (ソウジョショウ) さんの娘、12歳の珠晶 (シュショウ) は行動力の鬼である。自らを王の器だと宣言し、騎獣の白兔 (はくと; 本当はウサギの字が異体字なのだけど、フォントがないみたい) を連れて、昇山 (ショウザン; 過酷な旅をして、麒麟に天意を諮る) の旅に出る。
- “必要なことをきちんとやってくれる人がいないから、こんなに小さいあたしがいろいろと考えないといけないのよ。”
- 珠晶は大変利口なので、かなりサクサク旅を進めるのだが、クソ野郎に騙されて白兔を盗まれて困ってしまう。が、偶然出会った朱氏 (シュシ; 黄海を渡る浮民) の頑丘 (ガンキュウ) さんとか、またまた偶然出会った奏国 (ソウコク) の王の次男、利広 (リコウ) さんとかに助けられながら、蓬山を目指す。
- 珠晶は大変利口なんだが、素直ゆえ正論モンスターなので、過酷な旅の中、冷酷な判断を下す大人たちと、一度は袂を分かつ。
- “人でなし!” “それを汚いと思う、お前が甘いんだ。” 自己のために他の血が流される、それが玉座というものだ“
- しかし、珠晶は頑丘たちから離れたことで、彼らの冷酷さは自然の摂理であることを悟る。自分の浅はかさによって凶悪な妖魔をおびき寄せてしまった珠晶は、せめて妖魔を片付けてから、彼らの元へ戻ろうとする。激戦の中、一行からはぐれてしまった珠晶は、頑丘たちや、神仙の犬狼真君に救われる。
- この折に、頑丘は珠晶から、自分が王の器だと言うのは嘘だ、と真実の声を聞く。裕福に生まれ、過ごすことへの罪悪感から、上庠 (ジョウショウ; たぶん高校みたいなやつ) に行き、少学 (ショウガク; たぶん大学みたいなやつ) に行き、官吏になって人々を豊かにすることを目指していた。が、結局王が居ないと話にならないと考えた。周囲の大人たちは王がいないと愚痴を言うばかりで自ら昇山することをしない。だからまず自分が行く。それを聞いた頑丘は、珠晶はよい朱氏になるかもしれないが、おそらく、そういうことは起こらないだろうと悟る。
- 一行の元へ戻ると、そこには蓬山から麒麟が来ており、珠晶を迎えに来ていた。
- “どうして、麒麟が来るのよ……!?” “理由は一つしかないと思わないかい?”
- “蓬山から王気が見えましたから” “じゃあ、あたしが生まれたときに、どうして来ないの、大莫迦者!”
- 供王、即位!!!
感想
- カッケェ!!!
- とにかく珠晶のキャラクター造形が素晴らしいよな。彼女の考え方は、ポジティブ思考、というのとは違うように思う。彼女の思考回路は未来志向なんだ。珠晶の考えることは、いつも未来へ繋がっている。明るい子、ってわけじゃなくて、未来へひらけた子、って感じなんだ。それがすごく健全で、素敵だと思う。
- 珠晶はずっと玉座につくことが叶わなかったら朱氏になったり、騎商になりたい、と言っている。周りのみんなは、玉座と朱氏や騎商を並べることに笑うが、彼女にとってはどれも未来へ繋がる道のひとつであり、重みは同じなんだ。
- 目的に向かって突き進むマシーン、ってわけでもなくて、キツイことはキツイと感じる普通の感覚もあるのも安心だ。ホンマ、珠晶ちゃんは王の器やで。
- 珠晶がこのあと、90年に渡る安定した治世を続けるのは、すでに前巻で語られていたよな。
- 麒麟が珠晶の元へやってきたとき、ずっと王の器を標榜していた珠晶が、 “どうして、麒麟が来るの” と漏らすのがいいよな。彼女は玉座に捕われてはいないことがよく分かる。
- 珠晶を見る頑丘さんの視点も良いよ。ずっと珠晶のことを侮っていた頑丘さんが、とうとう彼女の登極を確信するシーンは熱い。
- てか頑丘さん、良いよね。珠晶の主張に心を動かされない背景には、彼自身の思想がきちんとある。王が欲しいと希うのは依存であり、土地を持って定住することがなければ、そもそも王は必要ない、というものだ。真・女神転生のロウとカオスみたいなアンビバレンツ模様で面白い。
- 利広さんのことは、みんな最初は麒麟かと思うよな?
- ところで "図南の翼を張る" というのは大事業を企てることを意味する実在の故事成語だ。出典は荘子らしい。
- 読書メモを取る手法について。はじめから、章ごとに枠を切っておくのはかなり良い。自分メソッドとして固まってきた。