概要
知人に借りたので読んだ。サマリと感想を書く。

サマリ
結局、ぼくはよく眠るのに有効なメソッドが知りたいワケなので、そこからまとめよう。
- まず、普通の時間に寝るのが前提
- 入浴して皮膚温度と深部体温を上げる
- 熱放散が起こり、皮膚温度も深部体温も下がる and 床につくまでの時間を、副交感神経優位になるような活動で過ごす
- その状態が、人間が自然に眠るときの状態に近いので、入眠しやすくなるし睡眠の最初の90分によいノンレム睡眠を取れる
- アラーム2回作戦で、レム睡眠中に起きる (最初は小さい音で、次は20分後に普通の音で)
なんで? をまとめる。
- なんで体温を気にしてんの?: 人間は、深部体温が皮膚温度より2度以上高いのがデフォルトである。そして、睡眠時は皮膚温度が上がって深部体温が下がって、差が2度以下になるという特徴があるらしい。
- だから熱放散とかを使って深部体温を下げようってこと?: 下げようっていうか、勝手に下がるんだけど、それを入浴でスムーズにしてやろう、という意図。
- 入浴したら熱くなるんじゃね?: なるけど、そのおかげで末梢血管が広がる。そうすると熱放散が起きやすくなるから、上がったぶん下がりやすくなる。その下がる動きが、自然に眠る前の動きに近いので、「自然な動きのサポート」になるってこと。
- 末梢血管を広げたいなら軽く運動したらいいんじゃね?: それでもいい。ただし運動は交感神経を優位にする可能性もあるから、まあ、オススメは入浴ですわ。
- 睡眠の最初の90分ってのは何?: 人間の場合、ノンレム睡眠とレム睡眠の1周期が合わせて90〜120分くらい。その周期が4回くらい繰り返される。「最初の90分」はその最初の1周期目を指す。
- なんで最初の90分にこだわってんの?: 1周期目のノンレム睡眠の間の効果がスゲーのだ。睡眠圧 (眠りたい欲求) の放出がもっとも強い。自律神経がもっとも整う。成長ホルモンがもっとも分泌される。
- なんでレム睡眠中に起きたいの?: レム睡眠は浅い睡眠なので、そのとき起きるのが自然。ノンレム睡眠のときに起きると寝覚めが悪い。
- アラーム2回作戦ってのは何?: なるべくレム睡眠中に起きるための施策。最初の小さな音で目覚めれば、そのときレム睡眠だ、たぶん。そのときノンレム睡眠だったとしても、20分後にはレム睡眠に切り替わっている可能性が高いので、そこでもう一度アラームを鳴らす。
- 最初の、普通の時間っていうのはどういうこと?: 脳は身体の状態をサーカディアンリズム (概日リズム) に合わせて回しているので、それに合わせないと上の方法も効果が薄いってこと。昼間に陽光を浴びて、夜は大人しくしようってこと。
以上がメインメソッドなのだが、それを補助する tips を並べていく。
- 湯船に15分浸かる場合は、その後90分くらいでベストな体温になる
- シャワーにすればもっと短期間でその状態になれる
- 熱放散により体温を下げることが大切なので、冬とかに、お風呂上がりに着込むのはダメ。末梢血管から熱が逃げなくなる。靴下を履いたまま寝るのも足からの熱放散を妨げるのでダメ。履いて温めて、脱いで熱放散するのはアリ
- 睡眠は「後ろにずらすのは簡単で、前にずらすのは困難」という性質がある
- Forbidden zone (睡眠禁止ゾーン) というものがあり、普段就寝する時間の直前から2時間はもっとも眠りにくいらしい
- これは原因不明なのだが、それを知っていれば、「明日の朝は早いので今日は1時間早く寝よう」が、「睡眠禁止ゾーンへの侵入である」とわかる
- なんなら、いつも通り寝て、睡眠時間を1時間削るほうが、入眠がスムーズで、眠りの質を確保できる可能性が高い
- 大量のアルコールは睡眠の質を下げるというのはよく知られている。が、度数が強い蒸留酒は意外とそうでもない。ウォッカをクイッとあおり、素早く訪れる酔いの力で眠るオペラ歌手がよくいるらしい。
- 夜通し作業する必要があるときは、110分後くらいにアラームをセットして、先に「最初の90分」の睡眠をとってから、朝に向けて作業しよう
- 先に作業して、明け方に寝ようとしても、集中した脳が興奮していて眠れない
- 加えて、朝が近づくにつれてサーカディアンリズム (概日リズム) により脳が活性化し交感神経優位になっている
- つまり、同じ時間の使い方でも、睡眠を先に持ってくるほうが、後へもっていくより理屈に合っている
- 「スマホが睡眠に影響を与える」のはブルーライトが原因ではなく、操作や内容が脳を刺激するから
- 有名な「眠れなかったらベッドで粘らずベッドから離れる」のは認知行動療法に合っている。ベッドは眠るための場所であり、本を読んだりテレビを見る場所ではない、とするのは有効
以上が方法論について。以下にその他、「へー」ってなったとこを。
- 眠るまでの所要時間のことを入眠潜時という。健康な人はだいたい7〜8分なんだって
- NHK の調査によると、夜10時までに寝ていた人は、1960年代には60%で、2000年ごろから20%台になったらしい。現代人は夜、起きすぎ
- サンディエゴ大学、スタンフォード大学、名古屋大学の調査によると、7時間睡眠の女性がもっとも BMI が低く、それより短くても長くても BMI がだんだん高くなっていく
- 脳は150ccの脳脊髄液に浮いている。脳の老廃物は脳脊髄液へ排出される。脳脊髄液は1日4回入れ替わる。老廃物が溜まると、アルツハイマー病の原因のひとつ、アミロイドβが脳に蓄積する。排出がもっともよく行われるのが、例の「最初の90分」である
- 筆者は眠る前に疲れ目用の点眼薬を使っている
- レム睡眠中は大脳皮質が起きているので、そのときの夢はストーリーがあり実体験に近い。ノンレム睡眠中は大脳皮質が寝ているので、そのときの夢は抽象的で辻褄が合わない。そして、起きたときに覚えている夢は、直前に見ていた夢である。よって、覚えている夢が、レム睡眠中の夢の特徴を持っていた場合、適切な起き方をしたことになる
あと、個人的にはこの本の蛇足だと思う、眠気と闘う節からいくつか。
- うとうとしてしまう午後の眠気のことをアフタヌーンディップという
- 結局パワーナップが最強
- 種としてのヒトは進化の過程で昼寝をとっていた可能性がある
- 30分未満の昼寝をする人は昼寝習慣のない人に比べて認知症発症率が1/7
- 1時間以上昼寝をする人は昼寝習慣のない人に比べて認知症発症率が2倍
- したがって仮眠は20分にしておけ
所感
有名な本らしいのだけど、ぼくの印象はあんまりよくない。
- なんか、バラバラとして、まとまりが悪い印象がある。要所要所で、説明がふわっとしている感じもする。
- 「深部体温には、上がったぶんだけ大きく下がろうとする性質がある」「手足を温めると熱放散が起きて体温が下がる」あたりはとても大切な概念なのに、説明の解像度が粗くてわかりづらい。
- 最後のアフタヌーンディップの章を蛇足に感じてしまった。「一日一食」の本でも同じことがあった。メインテーマについてよく情報が詰まっているのに、余計なことが最後に付帯していると、「何? ページ数にノルマでもあったの?」って思っちゃう。メインテーマにフォーカスしてほしい。
ただ、バラバラとしているぶん、あちこちで同じ話をしており、「それが大切なんだな」と理解しやすい、という考え方もできる。書き方が好みではないだけで、「結局、ぼくはよく眠るのに有効なメソッドが知りたかった」ワケなので、目標は達成できた。とくに、「早く起きるから早く寝よう」がダメというのは非直感的で学びが深かったかも。
なかなかぼくの現在の習慣と折り合わない点もあり、難しいけどねえ……。
- 夜しか友達とスプラトゥーンで遊べない → 交感神経がめちゃくちゃ優位になるはずなのでダメ
- 趣味のほとんどが PC 関連で、頭を使うことである → 交感神経がめっちゃ優位
- 寝る前のガチめのストレッチを習慣としている → まあ程度によるのだけれど、この本は激しめのストレッチに注意を促している