概要

人から借りたので読んだ。ネタバレサマリと感想を書く。
サマリ
- 『冬の時代』: コズカタの村出身のヤチダモくん12歳とエンジュくん19歳が、氷雪に覆われた日本で、暖かい地域を目指す。フィールドではゲノムデザインによって生まれた寒冷化適応の人工動物たちが蔓延る。
- 『たのしい超監視社会』: ジョージ・オーウェル『一九八四年』のパスティーシュ。あれはオセアニアでの反体制側の話だったけど、本作はイースタシアの体制順応側の話。監視社会の若者たちがたくましく反体制的な人たちを通報する。
- 『人間たちの話』: 自分とは異質の存在を求め、地球外生命体を研究する人の話。そんな主人公が、甥の境遇を見て、そもそも自分が異質を求めるのはなぜなのか、を理解して、甥に共感するストーリー。
- 『宇宙ラーメン重油味』: 太陽系外縁天体 (海王星より遠いとこ) の話。 “消化管があるやつは全員客” をポリシーとするラーメン屋さんの話。銀河の地球外生命体たちを相手に商売する SF ファンタジー。
所感
- 『冬の時代』: 何の話かよくわかんなかった。
- 『たのしい超監視社会』: 監視社会の話となると、自然と反体制側のストーリーだと思いこんでしまうものだ。ぼくもそうだ。だけどその逆もありうるよね、という話。『一九八四年』のパロディか、と思ったんだけど、著者のあとがきで “パスティーシュ” っていう言葉を知った。模倣は模倣でも、元ネタを風刺するのがパロディで、元ネタをリスペクトするのがオマージュで、元ネタの様式を真似るのがパスティーシュなんだって。
- 『人間たちの話』:
- 地球上の生物は同質に満ちているので、異質を求めて地球外生命体を探しているという主人公のロジックは分かりやすかった。
- その甥は親に捨てられており、 “自分は一人っ子だから、何かの間違いで生まれたのかもしれないと感じてしまう。だから兄弟がいたらよかったのに” と語る。
- 主人公は、そんな甥と、 “生命が生まれるべくして生まれたのだと感じるために地球外生命体を探している” 自分を重ね合わせ、共感する。
- “そもそもなんで自分は◯◯がしたいんだっけ” が解き明かされるストーリー自体は面白いのだけど、 “もうひとり居れば自分が生まれるべくして生まれたと信じられる・必然性に基づいた結果だと思えて嬉しい” という論理がよく分からなくて、ちょっと読後感がよくなかった。
- 『宇宙ラーメン重油味』:
- “地球の歩き方” が出てきて笑った。本作においては、マジで “地球” の歩き方を指している。
- “あたしは地球人の脂が好きなのよ” “地球人を食うな。その脂は豚っていう地球動物のだ”。 地球上の生物への解像度が粗い地球外生命体が面白い。
- 銀河標準語は光学方式、物質波方式、放射線方式などの表現形態がある。設定の作り込みがいい。
- 世界観設定モリモリの SF ファンタジー作品で、無限大の想像力を感じられた。
- てか『人間たちの話』のあとにこの短編があるのがオモロイ。
他にもいくつか短編が入っていたが、ちょっと印象が薄いのでこれくらいで。
だけど、ぼくの事前知識が足らないせいで印象が薄いのかも、とも思った。何しろ、『たのしい超監視社会』なんかは、『一九八四年』を読んでいなかったらマジでチンプンカンプンだろう。それと同じで、ぼくがよく分からなかった話については、別の元ネタがあるのかも……と思った。
最近読んだ別の短編集とは、読後感が結構異なる。『生命式』は、短編集全体の雰囲気が一貫していたので、コース料理を食べた気分になった。