概要
前回の続き。
まあ、これ↑は短編集だったので、物語としての前作はこちら↓か。
ヤバいよ今回は。上下巻を超えて全4巻だもん。すべて400ページ級だから、1,200ページ読んだことになる。サマリと感想を書く。
サマリ
戴国 (タイコク) でのこと。前回は、弘始2年に文州の乱が発生して、泰麒 (タイキ) くんと泰王 (漢字が変わるからややこしい) 驍宗 (ギョウソウ) さんが襲われて行方不明になり、最終的に泰麒くんは戴国へ帰還する話だった。
今回は……
- 弘始8年、泰麒くんと李斎 (リサイ) は、志を同じくする仲間を探しつつ、驍宗さんを探すことにする。
- 泰麒くんは項梁 (コウリョウ) といっしょに王宮へ戻り、悪どい阿選 (アセン) や冢宰の張運 (チョウウン) の苛烈な扱いと渡り合い、せめて民の救済を進めるよう尽力する。
- 李斎は方方で仲間を集める。去思 (キョシ) さんとか、酆都 (ホウト) さんとか、土匪の朽桟 (キュウサン) とか、葆葉 (ホヨウ) とか、一筋縄ではいかない連中と苦楽をともにして、一台軍団墨幟 (ボクシ) を形成する。
- 行方不明の驍宗さんは実は、阿選の指示で動く烏衡 (ウコウ) の軍団により、函養山 (カンヨウザン) の竪穴へと落とされていた。水の流れに乗って流れてくる食べ物で命を繋いでいたのだが、6年を経て自力で脱出してきた。が、阿選に捕まってしまう。
- 阿選は民の面前で驍宗さんを簒奪者として処刑することにするが、そこで泰麒くんが転変 (テンペン; 麒麟が人形から獣形へ変身すること) することでそれを救う。驍宗さんさえ居れば、前巻で延王さんが援助を約束しているのでもう大丈夫だ。
- 3ヶ月ほどのちに、驍宗さんたちは阿選を倒すことに成功した。
所感
前回も書いたけれど、文州の乱の件については、以下のような謎が提示されていた。
- 玉座を奪った阿選の異常な振る舞いの理由は?
- 周囲のみんなは、阿選は立派な人だと思っていたが、内心は驍宗さんへの嫉妬に燃えていた。無気力に見えたのは燃え尽き症候群だ。
- 戴国を席巻しているマインドコントロールの正体は?
- 次蟾 (ジホウ; 魂魄を抜く妖魔) の仕業。琅燦 (ろうさん) の入れ知恵で阿選が使役していた。
- 驍宗さんが6年間も姿を見せないのは何故?
- 大怪我の上、函養山で崩落を起こされて閉じ込められていたせい。なお崩落は貍力 (リリキ; 爆音を起こす妖魔) の仕業。琅燦の入れ知恵で阿選が使役していた。
- 覿面の罪、ひいては天綱のシステムの正体は?
- まったく触れられず。
なるほど。……く、くだらね〜〜! (小声)
いや……、特殊能力を持つ妖魔の存在がご都合過ぎるでしょ、とかそういうのはいいよ。萎えるのは、前回に物語の舞台が天の実在にまで登ったのに、またそれが地に落ちて、しかもそれに1,200ページも費やされたこと。
緑さんが大ファンである、『六花の勇者』の下位互換みたいな話だった。
『六花の勇者』は、魔物の特殊能力への納得感があり、人物の内面描写が巧みで、巻を追うごとに舞台がより高みへと登っていき、物語が昇華する感覚が心地よいんだよ。
ひとつ、良いなと思った一節を。
- “修行に成果を求めてはならない。それは修行をなまくらにする” という、去思さんの言
これは修行者の心得である。結果を得たいと思うその気持ちこそが、結果から身を遠ざける。積み重ねが大切なタイプの趣味を淡々とこなすときに役立つ考え方かもしれない。