概要

知人からの紹介で、読んだ。

  • 緑さん: “Amazon が配送する商品が3500円を越えたら送料無料にするよ” のやつが足らなかったんで、こないだあなたが言ってた “DIE WITH ZERO” ってやつ買いましたよ。
  • 知人: エッ?! なんだー、言ってくれたら貸してあげたのに。
  • 緑さん: あー、そうでしたか。ありがとうございます。次の機会にはお願いします。
  • 知人: ていうか読まなくていいよ!! “お金を使い切って死ぬのがベスト” って書いてあるだけだから!
  • 緑さん: スッゲェ要約っすね。

サマリと感想を書く。

 

サマリ

お金を使い切って死ぬのがベスト!! いろんな方向から、それを勧めるよー! どれかが刺さったら、実践してくれ! というのが本書の構成だ。

健康 (ヘルス) なくして富 (ウェルス) に価値なし

  • “人生とは動くこと。” 年齢を重ね、動くことが苦痛になると、できる経験の幅が減る。
  • それは、体力が落ちるほど、手持ちのお金の価値が減るということ。
  • 言い換えると、年齢とともに、お金から価値を引き出す力が減るということ。
  • お金から価値を引き出す力が高い黄金期 (若い時分) に、お金を使うべき。

ライフエネルギーの分配という考え方

  • “Your Money or Your Life” という本が元になっている “ライフエネルギー” という考え方。
  • これが有名な “FIRE” の原典らしい。
  • ぼくらは、1時間働いて、時給を得て、時給でモノを買う。このとき、最初の1時間のライフエネルギーをモノに変換した、という考え方をする。
  • もしお金が余らせて死んだら、ぼくらは人生の時間 (ライフエネルギー) を捨てたことになる。

アリはいつ遊べるんだ?

  • アリとキリギリスの逸話がもてはやされ、貯蓄がよいこと、という価値観がはびこりすぎている。

体験 = 投資 という考え方

  • 体験は一過性の利益ではなく、今後の人生においての財産となり、記憶に持っていることで継続的に利益を生む。
  • 体験 = 記憶 = 投資 = 配当を生む = 生活を豊かにする、という考え方。
  • SNS が “3年前こんなことをしていました” と出してくるのは、人々が昔の思い出で幸せを感じることを利用している。

身体も動かない人生最後の数ヶ月のために若いころの貴重な数年間を犠牲に?

  • 典型的な溜め込み理由のひとつ、 “老後の医療費” への筆者の反論。
  • “身体も動かないときの終末医療のために、貴重な数年を犠牲に?” “それが合理的だとでも?” “身体も動かない老後に真に価値あるものは、終末医療のためのお金ではなく、若き日の体験の思い出である。”

子どもへ相続する予定? だったら今渡せや!

  • 典型的な溜め込み理由のひとつ、 “子どもへ残すため” への筆者の反論。
  • 子どもへ渡すこと自体は問題ない。だがお前が死ぬころには、子どもたちがその資金をもっとも有効に使える時期は過ぎている。
  • 子どもが財産の価値をもっとも引き出せる時期は、26歳から35歳。

死後に財産を寄付することも恐ろしく非効率的

  • 生前に寄付しないことで、 “そこにお金があるのに、今助けを必要としている人々はその恩恵を得ることはない” という事態となる。恐ろしく非効率的。
  • 早くに寄付をすることは、 “そのお金を運用して増やしてから寄付する” メリットを上回る。
  • とくに、教育への寄付は、今、することが効率的。教育を受ける人が多いほど、その地域では貧困、犯罪、暴力の発生率が低下する。よって教育への寄付は、それ自体が社会への有効な投資である。

早期リタイアしろとは言っていない、どこかのタイミングで稼ぐ額より使う額を高くしろと言っている

  • 仕事が好きだから、仕事をやめたくないんだが? という人へのコメント。
  • 大半の人は、45歳から60歳の間に資産のピークを設定するとよい。

無駄金を使えとは言っていない。良い思い出を得るためにお金を使えと言っている

  • 高級レストランだの高級車だのにお金を使うことを勧めているわけではない。
  • "これは将来、思い返して幸せになれるような思い出になる" と思えるようなことにお金を使おう。

 

感想

まとめると、

  1. 人生をもっとも素敵にするのはたくさんのよい思い出
  2. それをいっぱい得る方法は、時間とお金から、高効率に価値を引き出すこと
  3. その具体的な方法は、まず、若いころにお金を貯め込むことをやめて体験を溜め込むこと
  4. 次に、年をとってきたら、使う予定もないお金を貯め込むことをやめて DIE WITH ZERO へ向かうこと

原題の副題が “Getting All You Can From Your Money and Your Life” というのだけど、なるほどぴったりな副題だ。全編を通して、こう、そこにある “時間” とか “お金” からギュウーとエネルギーを吸い出して、 “体験” へ変換して、脳へ格納している、というようなイメージがずっと浮かんでいた。化石燃料からエネルギーを吸い出すような感じで。筆者が持っているイメージとそう違わないのではないかなと思うぜ。

以下、バラバラと所感を。

  • 経験がその後の人生において継続的に利益を生む (ので、投資と配当に喩えることができる) というのは理解しやすかった。ぼくの野宿旅とかルーマニア経験とかの話って、ウケること多いもんな。
  • ぼくは体験したことをかなりブログに残してきており、すごい量になっている。これは、体験から配当をかなり効率的に搾り取っていることになると思う。
  • 若いころに健康に投資をした人ほど得をする、というのも理解しやすい。ずーっと継続的にランニングをしている人間は、ぼくでなくともそのことを理解していると思う。
  • 本書はビル・パーキンスさんが自分でぽちぽち書いたものではなく、ライターのマリーナ・クラコフスキーさんが書いたものである。
  • 冒頭の知人は、若いころ、平日に働き、毎週末国内旅行だの海外旅行だの音楽フェスだのに行きまくり、稼いだお金をすべて使い果たす生活をしていた。……そりゃ、 “ていうか読まなくていいよ!!” になるよ。ぼく以上に、本書の理論をとっくのとうに実践済みだ。
  • ぼくが彼女から昔の思い出話を聞くたびに感じる畏怖の念は、若くして一財産を築き上げた投資家に対して持つそれと似たようなものなのだろう。

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