概要

知人からの紹介で、読んだ。

  • 知人: 人間関係改善系の本なんだけど、そのときケンカしてた相手から渡されてさあ。
  • ぼく: えぇ?
  • 知人: “キミにはこの本が必要だと思う” みたいな感じに言われて。
  • ぼく: “自分の小さな箱から脱出する方法” をケンカ相手から渡された?
  • 知人: うん。
  • ぼく: バカにされてるだろw
  • 知人: そのときはそう思ったw

サマリと感想を書く。

 

サマリ

人間関係の問題を解消する方法を綴った本だ。大企業ザグラム社で管理職に就くトムが、その職に相応しいマインドセットについて、上司のバド、ケイト、ルーから講義を受ける。それが本書の大筋だ。

  • 上司たちの主張によると、トムには問題があり、ザグラム社の管理職にはまだ相応しくないとのこと。
  • その問題とは、トムが “箱の中” に入っていることだ。
    • “箱の中” はもちろん比喩で、他人のニーズと望みの重さを軽くみている状態を指す。
    • 別の言い方をすると、他人をありのままの人間として見ておらず、物だと思っている状態を指す。
  • その状態はビジネスにとって害だ。
    • 本当は誰もが同じように望みを持っているのに、自分の望みのほうが重いと考えるためには、自己正当化が必要になる。
    • 自己正当化をするためには、相手が間違っている必要がある。
    • よって、他人を軽く見ている人間は、自分を正当化するために、他人の失敗や間違いを望むようになる。情報を隠すようになるし、積極性を欠くようになるし、参加意志を欠くようになる。
    • ビジネスにとって害だ。
  • その状態は家庭にとっても害だ。
    • トムもバドもケイトもルーも……登場人物全員が、家庭内の人間関係に問題を抱えていた、あるいは今も抱えている。
    • 妻のことを協調性の無い人間だと思っていたり、子供のことを叱る対象としてしか見ていなかったり。
    • しかしそれも、自己正当化の結果だった。自己正当化をするためには、相手が間違っている必要があるので、他人の欠点がより大きく見えるようになる。
    • しかもその態度は伝染し、自己正当化は両者とも行うようになるので、誰もが家庭内平和を望んでいるのに、自分たち自身で家庭内の溝を深めていくことになるのだ。
  • 一度、それに気付いてみると、トムは、他人をありのままの人間だと思って接することが気持ちの良いことだと気づく。元々は、他人の気持ちのことを慮って仕事をするなんて、余計な手間が増えるだけでは? と思っていた。でも、慮ることによって面倒が増えたなんて思わなかった。相手のことをありのままの人間だと思ったら、相手のために何かすることは喜びだったのだ。
  • だけど、いつも “箱の外” にいること (彼我のニーズと望みを同じように扱い、相手をありのままの人間として考えつづけること) ができるんだろう?
  • 実は、そう考えること自体が、 “箱の外” にいつづける方法なのだ。
    • “自分が間違っているかもしれない” と考えることは、自己正当化の真逆の思考だ。
    • もはや以前とは違って、 “間違っているかも” と思うことは、自分を脅かす恐怖ではなく、救いをもたらすものになっていた。

 

所感

  • この本の第一章の題は “君には問題がある” なのだが、ケンカ相手から渡された本の第一章が “君には問題がある” なのウザすぎるwいきなり笑わせてもらった。
    • まあ一応補足しておくと、知人のケンカ相手さんは本当に穏やかな人で、嫌味とかではなく親切心でこの本を知人へ勧めたのだ。今やわだかまりが無いからこそ、冒頭のように冗談のネタに出来るってことで。
  • えーと。ようは、これは、批判的思考 (クリティカル・シンキング) が大事だっていう本だよな。この本は、一文でサマリするなら、 “クリティカル・シンキングによって自己正当化から解放されると、他人の望みを自然と尊重できるようになって、公私にわたり人間関係が改善するぜ” となるかな、と思う。
  • なかなかよい読書だったよ! “いや、そりゃそうでしょ分かってるよ普段から実践してるし、しようと努めていることだし” となる内容ではあるんだけど、 “普段から実践しているし、しようと努めている” 目標を別の人の言葉で言語化してもらうのはよいことだ。目標の解像度が上がって、より実践しやすくなる。英単語の暗記と同じで、何度も出会って、何度も目にするのって効果的なのだ。

その他。

  • ぼくは過去、他人から、 “あなたは私を尊重していない” と指摘されたことがある。本書では、それと似たような光景が描写されていた。
    • バドは妻から言われた。 “わたしは (あなたにとって) ただのやっかいなお荷物でしかない”
    • バドいわく “(自分が) 妻がしてほしいと思っていることにわたしがどの程度注意を払っているか (まったく払っていないか思い知った)”
    • うーん、正直納得した。 “あなたは私を尊重していない” とは、ぼくが、ぼくの望みを叶えることを優先しつつ、相手の望みを叶えることは考慮していないことを示す言葉だった。
    • 村上春樹が昔の作品で、 “ぼくが「自分のことばかり考えている」から問題が起きる” というコンセプトを扱っていたな、そういえば。似た状況なんじゃね?
  • 作中、トムが狼狽するのだが、 “バドの質問に集中しなければ、という状況が心を鎮めてくれた” というシーンがある。
    • ぼくは仕事をしているときよく怒るのだけど、そんなときある仕事仲間は、ぼくへ “まあ落ち着け” といった言葉ではなく、実際的に解決すべき問題について質問をするんだ。
    • その質問と向き合って論理的に考えているとき、ぼくは自分が戻ってきたような気がするものだ。
    • これ、仕事仲間が、ぼくを宥めるのに効く方法がこれだと思ってやっていてくれるんだとしたら、ありがたいなと思った。
  • バドの過去の仕事仲間…… “箱の外” にいるアニタの描写がよかった。
    • “アニタにはわたしを責める必要はなかったんだ。だってアニタは箱の中に入ってなかったんだから。自分を正当化する必要がなかった。”
    • こっちが必死になって “箱” から出る方法を検討しているのに、 “箱” なんか最初から無いみたいに生活している人たちがいるのだ。なんかそういうのっていいよね。
    • ぼくにとって、親愛なるルームメイト1号がそういう存在だった。