概要

“むかし、論理パズルを爆速で解いていく女の子が出てくる小説あったな……ああ、『消閑の挑戦者』か”。

……と、ふと思い出したんだけれど、細部はうろ覚えだったし、2,3巻のストーリーについてはまるきり忘れていたので、 Kindle で買って再読してみた。 “パーフェクト・キング”、 “永遠と変化の小箱”、 “ロスト・エリュシオン” のサマリと感想を書く。

 

サマリ

  • 世界に2人存在する最強ミュータントのひとり、果須田裕杜 (かすだ・ゆうと) くんが謎解きプラス格闘大会みたいな “ルール・オブ・ザ・ルール” を開催する。世界中の天才を集め、自分と戦わせるイベントを開く。
  • 春野祥 (はるの・さち) くんには双子の妹がいた。彼女は超飛躍 (ウルトラ・ジャンプ) を使える優秀な子だったが、事故でサッチーをかばって亡くなる。サッチーはそのころから超飛躍を部分的に使えるようになった。妹から受け継いだようにも見えるその能力を使って、彼は天才たちに挑んでいく。妹の能力が世界一だと証明するために。もちろん、 “ルール・オブ・ザ・ルール” にも参加する。
  • サッチーはちょっとミスってクラスメートの鈴藤小槙 (すずふじ・こまき) ちゃんを “ルール・オブ・ザ・ルール” に巻き込んでしまう。しかしコマキは平時でも記憶力抜群、計算能力抜群で、さらに超飛躍が世界で一番上手な “超飛躍の王” であった。彼女とサッチーは “ルール・オブ・ザ・ルール” で優勝してしまう。 (ここに論理パズルを爆速で解いていくシーンがある。)
  • この件で、サッチーは、自分がはるかに及ばないコマキに複雑な思いを抱くようになり、コマキは、サッチーのように自分の強い意思で行動する人間に興味を持つようになる。
  • “ルール・オブ・ザ・ルール” で優勝したコマキに興味を持ったのが、最強の人工知能を作るために頑張っている灰火秋秋日子 (うたびし・あきひこ) ちゃんだ。彼女はコマキを灰火秋島に招待して、研究を手伝ってもらおうとする。
  • そこへ人工知能を狙う連中がずらずらと現れる。とくに超飛躍使い対策の訓練を受けている、レイヴン、ジラフ、リリカは強かったが、しかし最強のコマキと、秋日子の妹である灰火秋あかりも強力な超飛躍の使い手だったので返り討ちに遭う。
  • 最終的に灰火秋島は火山活動により滅び、秋日子ちゃんは亡くなる。彼女は裕杜くんと同じように、目的のために死んでいった。コマキには自分の目的がないので、彼らの行動を理解不能だ。でもそれは、コマキは彼らとは違って未完成で、 “これから” の天才だから、らしい。
  • コマキと、その従姉妹の鈴藤いるる (すずふじ・いるる) とサッチーはウォリスランド共和国はアウルス大学の病葉剣花 (わくらば・けんか) 博士を訪ねる。この博士は非人道的実験を繰り返し、 “超人” を作り出す実験をしている。
  • 実験体となった、森野イズミ (もりの・いずみ)、クラウディア・ヘルダーリン、車善鉄 (ちゃ・そんちょる)、イオ・アンセルメと、コマキやサッチーは友達になる。
  • 穏やかな友人関係が続くかと思いきや、森野イズミが全員をなぎ倒していく。コイツは世界に2人存在する最強ミュータントのもうひとり、最強の暗殺者で、自分の寿命が尽きる前に世界を戦争で滅ぼそうとする危険人物だったのだ。今回の目的は、世界を滅ぼせる可能性がある病葉博士を亡命させることだ。
  • だが、鈴藤いるるが病葉博士を超越した研究を完成させたことで方針変更、病葉博士を殺害する。そして、コマキは戦いの中で超飛躍をさらにレベルアップさせて、ミュータントを超える能力者に成長して、最強のイズミを追い払う。

 

感想

  • すでに昔読んだ本である、というのもあり、今回はメモをとらずに空き時間にザクザク読んでいったんだけれど……だめだぁ、細かいあらすじを、忘れちゃうな。3巻ぶんだしな……。
  • 全体的に、登場人物たちの能力の鮮烈さのみにフォーカスが当てられており、主要人物の心理描写がおざなりであるように感じた。
    • サッチーが、妹の能力を証明するために天才たちに挑み、しかしコマキに圧倒的な差をつけられて複雑な思いを抱く、という話の流れ。彼がこれにどう向き合うのか、というところは興味があったのだけれど、ほとんど描かれない。結果として、作中で敵役が評するとおりの、 “中途半端な実力者” に堕しているように見えてしまう……。いやもちろん、他のキャラクターが何かと落ち込みがちな中、いつも明るいサッチーは物語の中で映えるのだけどな? でもお前のパーソナリティが、いつも明るいハズないだろ!
    • コマキが、世界最強の能力を持ちつつ、無目的に生きている一方で、同じレベルの能力を持つ友達たちは目的に殉じていく。それにコマキがどう向き合うのか、というところは興味があったのだけれど、結局明確な回答を出さないまま、なんとなくシリーズが終わってしまった。結果として、彼女はただの強い人という印象になってしまっている。フィクション世界のただの強い人なんて、虚しいものだ。
  • そんなわけでさ、ぼくとしては、暗殺者の森野イズミがお気に入りになっちゃうよな。強くて、動機と、目的と、行動がまあまあ一致していて、キャッチーな性格をしていて、かわいい。
  • 巻ごとに登場人物が使い捨てられていくシリーズだ。祇園寺くん、もう出ないの?! 安住さん、もう出ないの?! Chica ちゃん、もう出ないの?! あかりちゃん、もう出ないの?!
  • 潮天市 (しおあまし)、大型客船 “うてな”、灰火秋島、ウォリスランド共和国のアウルス大学、と、結構いろんなところへ旅行にいくシリーズだ。だから飽きずに旅行気分で読み切ることができたよ。