概要

読んだ。サマリと所感を書く。

 

サマリ

  • 藤堂病院の若手、森河くんが人を轢き逃げしちゃう。なんとかそれを隠蔽しようとして、服を着せ替えたり、死体を遺棄したりする。
  • 鞍田 (妻) がその死体を見て、夫が死んだと勘違いする。何を言っているかわからないって? 今から覚悟を決めたほうがいい。このハナシにはおかしいメンタルの精神病患者がたくさん出てくる。
  • 鞍田 (夫) がその勘違いを解消しようと頑張るけれど、森河くんとしては彼に頑張られると困るので、鞍田 (夫) をノイローゼにするよう仕向けたり、病院で別の怪事件を起こして、みんなの目を鞍田夫妻から逸らそうとする。
  • 丁度よく、碧川 (夫)、古屋 (妻)、高橋 (夫) という、利用しやすい症例と経歴を持った連中が来院してくる。
  • 碧川 (夫) は、自殺志願者なんだが、よくモノが消失する妄想を見る奴だ。ただの勘違いだ。森河くんはその症状を利用して、目撃証言を狂わせるようなことをする。
  • 古屋 (妻) は、殺人歴のある人なんだが、自分の夫が別の女性と歩いてるのを見て、自分が分裂した! という妄想をする奴だ。ただの勘違いだ。森河くんはその症状を利用してセンセーショナルな事件を起こし、しまいにはこいつを殺害しちゃう。
  • 高橋 (夫) は、自分の妻が別人と入れ替わったという妄想で暴れる奴だ。ただの勘違いだ。森河くんはその症状を悪化させて、古屋 (妻) の殺害をこいつのせいにする。
  • さらに、森河くんはこれらの事件の犯人は副院長の波島さんであるかのように偽装する。
  • 波島さんに思うところのある、元妻の在家さんは、森河くんの偽装をかんたんに信じてしまう。が、波島さんはサクサクと真相を暴く。

 

所感

  • おかしいメンタルの精神病患者がたくさん出てくるミステリー小説だった。この小説における “おかしいメンタルの精神病患者” を具体的に説明しよう。それは、神経質で、潔癖で、謎に完璧主義で、細かいことにこだわり、そのくせ、物事の評価を自分の意見だけから作り出し、第三者視点を持たず、他人の意見を取り入れず、ファクトチェックも怠る連中だ。そういう連中がひとりで暴れ、周りの人に迷惑をかけ、犯人に利用される話だった。
  • その “犯人” は森河くんだということで話は落ち着くのだけれど、これは事実なんだろうか? 波島さんは、 “主治医である自分が真っ先に疑われるが、俺と同じ条件をもつ人物がいる” と森河くんを挙げる。けどさ、だから、それは、犯人たりえる条件を持つのは波島さんと森河くんであるってことだよな? 波島さんは、自殺事件への関与を隠したい、森河くんは、交通事故への関与を隠したい、という、確からしさという点では同等の動機があるよな? この事件の犯人としては、このふたりは同等に確からしいことにならないか?
  • まあそれはともかく、この小説の楽しみどころは、各患者の妄想の仕組みが解き明かされるところだと思う。
  • 一点だけ……高橋 (夫) の症状のきっかけとなった、姪の久美の発言が謎で、ぼくの中で妙なしこりになっている。高橋 (妻) が別人になっていると最初に発言したのは彼女なんだが、その謎が解き明かされていないように思う……。