概要

先日書いた、「停止性問題を自分なりに理解する」で触れた、アラン・チューリングさんが主役の映画。楽しめたけれど、肝心の佳境で理解できないことが重なったのでノートしておく。わからんのは以下2点だ。

  • 毎日設定が変わるはずの暗号文で、毎日同じ文字列が生成されている点。
  • 暗号解読に用いられた手法。

 

理解できない

ひとつめ

  • ヘレン「彼の通信は毎回5文字の CILLY で始まる」
  • アラン「ドイツ軍は毎回異なる5文字を使うはずだ」

まずひとつに、アランの台詞が理解できない。「毎回ランダムな設定で生成されるはずの暗号文が、毎回同じ文字列になっていることなんてありえない」なら分かる。

だけどこれは多分、エニグマの設定を毎日変えずに使ってるアホが、アホなことに同じフレーズを毎回使ってるということを意味しているのではないかな。これはエニグマ解読には直接関与していない。単に、毎日(あるいは毎回)同じ単語を使っている通信があるはずだ、ということを気づくきっかけに過ぎない。

とはいえ、「は? エニグマの設定ってドイツ全軍で同じではないわけ??」という新たな疑問が生まれて結局理解できない。

 

ふたつめ

  • アラン「もし…クリストファーが全設定を探索しないで済んだら? 通信の中で確実に使われる言葉だけを調べたなら?」
  • ヒュー「繰り返す言葉」
  • ジョーン「あったわ。『0600時 天気は晴れ 夜は雨 ハイル・ヒトラー』」
  • アラン「そうだ。それだ。そうとも。毎朝6時に天気予報を発信する。6時の通信には必ず3つの言葉が含まれる。『天気』と、それに…」
  • ヒュー「『ハイル・ヒトラー』」
  • ジョーン「今朝6時の通信よ」
  • このあと彼らは、クリストファーの操作に入る。
  • アラン「ヒュー、文字列の設定を」
  • ヒュー「『天気』と『ヒトラー』」
  • アラン「ピーター、ジョン、文字列の検索をかけろ。ジョーン、通信の文字は?」
  • ジョーン「LHWAQ」
  • そしてクリストファーは本日の設定(歯車の位置と、 EOT という文字)を当てる。

『0600時 天気は晴れ 夜は雨 ハイル・ヒトラー』の部分がわからない。なんで読めているんだ? 暗号化されているはずだろ? 天気予報だけは暗号化されていないってことか?

暗号化されていないとしても、それだと暗号解読作業に使えない。だって、暗号化された「XXXX」を「ハイル・ヒトラー」にデコードするための設定の組み合わせが膨大にあって、それを探していたわけだろう? だったら暗号化されたモノと、そのデコード結果があらかじめ分かっていなければ作業できないじゃないか。

というわけで、よくわからん。

 

理解できるためには

あんまり制作側のせいにはしたくない。けれど、理解できないのは映画の描写不足だと思う。もし以下のような描写があったとしたら、理解できると思う。

ひとつめ

  • エニグマの設定は毎日変わっているはずだが、たまに、面倒がって変えていないヤツが存在する。さらにそいつは、毎回同じ単語を文章の最初に書く。だから最初が必ず CILLY になっていた。

もしそいつが最初に書く単語を、アランが知っていたら、『天気』や『ヒトラー』ではなくても良かったというわけ。

 

ふたつめ

  • 『0600時 天気は晴れ 夜は雨 ハイル・ヒトラー』という文章は、暗号化されたものも、復号化されたものも、入手できている。
  • wetter が来ているであろう箇所の6文字の暗号文(xxxxxx とする)を抜き出し、 wetter を設定総当りで暗号化して xxxxxx になれば OK ってわけ。
  • これまでは6文字の暗号を解くために、すべての6文字のドイツ語で試していた。それが1単語になったから、あっという間に計算が終了できた。