概要
知人に勧めてもらって読んだ。サマリと感想を書く。
サマリ
第一章。
- 友幸友幸『猫の下で読むに限る』という小説の全文。
- この小説は、語り部の「わたし」 (『道化師の蝶』じゃなくて『猫の下で読むに限る』の) が、飛行機の中で、 A・A・エイブラムスと会って、その話を聞く話だ。
- A・A・エイブラムスは「銀色の捕虫網」を使って、「着想」を捕まえて、事業をする奴だ。まあちょっと意味不明だけどフィクションだから許す。
第二章。
- 友幸友幸を追う「わたし」が、友幸友幸の紹介をする章。
- 友幸友幸は数十の言語で作品を書く作家である。国をまたいで旅をしつつ作品を書く作家で、行方不明。
- てか数十の言語を操るって何? 天才か? って話だ。友幸友幸ってのももちろん偽名で、性別すら不明。なんやコイツ?
第三章。
- 友幸友幸が語り部となる章。このとき友幸友幸はどこかの国で、フェズ刺繍という刺繍を覚えている。
- そう実は友幸友幸はあちこちの国で現地の刺繍を覚えるお針子だったのだ。多言語については、そのついでに覚えているに過ぎない。
- そのへんまではまだ分かるのだが、語り部の友幸友幸は突然飛行機内へワープする。
- その中で突然「銀色の網」が出てきて、「過去の人物が未来のわたしが忘れた網を拾うのだろう」とか突然抜かしだす。
- ああ、ああ、あー、はいはい。これブッ飛んでる系の小説かぁ……超苦手です。
第四章。
- 友幸友幸を追う「わたし」が語り部に復帰する。
- 「わたし」は A・A・エイブラムス私設記念館に雇われて友幸友幸を追っているのだ。そう、 A・A・エイブラムスは実在の人物である。ただし死亡済み。
- 「わたし」の仕事は、友幸友幸の痕跡とか手がかりを記念館に届けることだ。今回もがんばってこさえたレポートを係員に渡す。
第五章。
- で、その係員が友幸友幸なんだが。友幸友幸はこの記念館で、自分の痕跡として送らてくるものをチェックする仕事をしている。
- で、友幸友幸は夜にはちゃんと文字を書いて過ごしている……
- で突然謎のアストラル空間にブッ飛んで謎の老人とエイブラムスが出てきてなんか意味不明なこと喋っておしまい。
感想
たった80ページの2011年芥川賞受賞作。こんな短い小説にここまで混乱させられるとは。
まず第一にぼくは章ごとに語り部が変わる話が苦手だ。第二に、突然ブッ飛ぶ話が苦手だ。したがってこの話は苦手だ。ちなみに、未来と過去がつながったような描写がされたタイミングで理解を諦めた。
ところで、今回これを紹介してくれた人は「文体が乾いていて好き」と推してくれたのだ。いや、たしかに文章の風味は悪くなかったぜ。
よくわかんなかったけれど最後に、面白かった箇所と初めて知った言葉を箇条書きして終わる。
- アール・ブリュット: 英語ではアウトサイダー・アートと言う。友幸友幸はこれに区分される作家である。
- ミスタスの古宿: ググったけど出ないから架空の地名か?
- コンセプション: 着想と受胎という意味がある。面白いよね、着想とはまさに、鳥が人の頭の中に入り込んで卵を産み付けるがごとしだ。
- 友幸友幸の言語学習法は次のようなもの: 音の連なりを聞いたなりに写し、そのつながりを正書法の危うい文章へ育て、徐々に比喩表現を整え誤字や脱字を減らして文章の体をならしていく。
- 友幸友幸はペンを頻繁に変える。単語の途中でさえも変える。ありえねえだろそんなこと!
- 本書の解説にこうある、「固定観念にさえとらわれずに読めば、何が何だか分からなくなることもないはずだ」。そんなわけあるか……?