リヴィングの共用本棚に入っていたので読んだ。サマリと感想を書く。



大学生の岬くんのもとへ、喋る鶏が現れる。「僕は未来人なんだけど、きみの友達の熊谷さんているじゃん? あの子3年後に病死するから、今のうちからなんとか食生活改善して運動して体力つけさせなさい」と言われる。「マジかよ俺あの子好きなんだけど」というわけで岬くんは彼女に食事を作ってやり、運動させて、空手道場に通わせてやる。彼女は道場の先輩が好きになり、熱心に運動し、だいぶ体力をつけた。そこで岬くんはふと思う。彼女が元気になるのはいいけど俺に得ないなあと。

そんなある日、岬くんは喋る蛇に出会う。「私も未来人なんですけど、きみが助けようとしてる熊谷さんね。あの子3年後に新型ウィルスに罹って死ぬが、そのおかげでワクチン作れて人類助かるのよ。だから助けるのヤメときなさい」と言われる。だが岬くんは「でも俺あの子好きだから助けるわ。人類より彼女が大事」というわけで交渉は決裂。蛇は怒って彼女を咬む。岬くんはやべえ病院へ、とふためくが、鶏が優しく声をかける。「大丈夫このタイミングなら死なないよ」。どゆこと?? 話を聞いてみると、こうだ。

蛇の目的は確かに蛇の語ったとおり、彼女をウィルスに感染させて死なせ、人類を守ること。ただ鶏のいた未来は蛇とは違う未来で、彼の目的は3年後ではなくこのタイミングで蛇に咬まれ、ウィルスに感染することだった。この流れだと彼女は死なず、人類はほぼ死滅するが鶏の未来が守られる。鶏は岬くんに「彼女からなるたけ離れたほうがいいよ、そうすれば君は死なずに済むと思う」とアドバイスしてくれて、目的を果たした鶏は未来へ帰っていく。

ただまあ岬くんは死など何のその、ウィルスに感染してぐったりした彼女に寄り添って生きることにしたのだった。



というわけで「熊谷さんの死で人類が守られた未来」と「熊谷さんの生で人類が守られた未来」の潰し合いに巻き込まれるお話だった。後者のほうが現存の人類は大量に死んじゃうんだけど、岬くんとしては熊谷さんの生が一番のニーズだったから、鶏の味方をしたって流れ。最後彼女から離れるんじゃなく、彼女のそばに居続けるという選択をすることこそが「小規模な自殺」だったわけだね。

好みではなかった。岬くんの魅力がない。