新世界樹の迷宮 ミレニアムの少女。10。

謎の樹海を有する辺境の街エトリア。樹海の住人たるモリビトとの摩擦を恐れ樹海探索を休止した遥香・光といっとき離れ、仲間の和田・ハインリヒと共に探索を続ける典子であった。エトリア長ヴィズルの意向に従いモリビトを殲滅した一行であったが、矢継ぎ早にヴィズルの配下から命を狙われるという事態が発生。ヴィズルは典子たちを利用するだけ利用し、最後には樹海利益のため消えてもらうつもりだったのだ。その場を切り抜けた一行は、返す刀でヴィズルをぶっ飛ばさんと樹海深奥へ向かうッ!




「向かうッ、はいいけどよ典子ちゃん。
 やっぱ遥香ちゃんと光くんには話した方いいと思うぜ。」
「というかヴィズルに狙われているのが俺達三人だけとは限らない。
 安全のためにそいつらも状況を把握しておくべきだろう。」
「う~。」

ギルドハウスにて…。

「…へえ、そんなことになってたの。」
「ワシらに相談もなく、何というか、アレじゃの。」
「う、ご、ごめんね二人とも、えっと、うち…」
「ホント昔から変わんないわね。」
「じゃの。」
「え?」
「昔から典子ちゃんの辞書に協調性って文字はなかったわよ。」
「それが分かっててつるんでるんじゃから、
 そこについて気兼ねすることないんじゃよ典子くん。」
「むしろ結果的に、モリビト殲滅なんて汚れ役を押し付けた形になって
 アタシ達こそ悪かったわ。」
「かかか。まあまあ、よ。
 そんなわけで、遥香ちゃん達が休止している理由はすでに
 なくなったわけだ。一緒に行こうじゃねーの。」
「だがギルドハウスの留守番も必要だろう。
 誰もいない間に刺客を放たれでもしたら、
 女中だけでは心許ないぞ。」
「ならとりあえずアタシ・和田ちゃん・典子ちゃんで出ましょ。
 勘も取り戻さないとね。」




「で、第五階層の魔物はどんな感じなのかしら?」
「この神蜂って奴ァ攻撃力がクソ高い上に麻痺と毒がついてくる。
 二人がかりでパリングしねーと高確率で全滅だぜ。」
「バックアタック=全滅だよ!」
「そのときは諦める他ないわね。気をつけましょ。」




「このバビルサってバカ野郎は攻撃力がバカ高い上に
 全体攻撃スキルを持ってやがる。
 脚封じと<重苦の呪言>必須だぜ。」
「バックアタック=全滅だよ!」
「そのときは諦める他ないわね。気をつけましょ。」
「ついでに、破滅の花びらって連中とか、
 ダイアーウルフって連中も結構ヤバいぜ。」
「だいたいバックアタック=全滅だよ!」
「どんな階層よ!! もうこうなったらレベル上げを…。」
「! その必要はなさそうだよ。」
「お。いたか。」




「へっ、言葉による説得とは、これまで問答無用突き通してきた
 男のすることじゃねーやな、エトリア長ヴィズルさんよ。」
「道をあけるか、でないなら掛かってくるんだね!」
(うーん、二人が執政院とモメてたときアタシいなかったから、
 どうもテンションについていけないわね…。)




「な、何よそれ。
 まるで『自分は知っている』かのような言い方…!?」
「…話、聞こうぜ遥香ちゃん。」

   いにしえの昔
   今よりはるかに高度な文明が存在しており、
   世界のあらゆる謎は科学と呼ばれる力で解明されていた。

   が、その科学の力が人々の未来に暗い影を落とす。
   科学の力は環境を破壊し、大地を汚し、
   何十万もの命が失われた。
   ヒトもまた、死滅の危機に瀕していた。

   しかし諦めず戦う者もいた。
   研究者たちは大地を再生する計画を進めた。
   「世界樹計画」。
   世界樹は大地を癒やす装置だったのだ。

   しかし世界樹が大地を完全に癒やすまでには、
   何千年という月日がかかることが分かる。
   ヒトの寿命では、とうていその結果を見ることかなわぬ…。

   ひとりの研究者、そして世界樹計画の立案者は決心した。
   世界樹の力をその身に組み込み、
   ヒトとしての命を捨て、
   世界樹と共にこの世界を永遠に見守ることを。




「あ~。そういうわけで、樹海の下にもういっこ街があるんだね。」
「この街は昔の連中の街で、時間がたってその上に
 もいっこ大地ができ、そこであたしらが産まれたってわけか。
 てか、何という高齢者。」
「…でも、何だか腑に落ちないわね。」




「これよ。ヴィズルはこの世界が復活するのを見たいだけなんでしょ?
 なんでアタシ達を襲ってくるのよ。」
「そうだよね。別にうち達、そのジャマしたりしないよ。
 世界をきれいにしてくれてるんだもんね?」
「エトリアの樹海利益のためだろ?
 ハナからそういう話だったじゃねーか。」
「世界の始まりから終わりまで見守ろうって人間が、
 ひとつの街の経済を守るためにセコセコ小細工するかしら?」
「別にアリだろ?
 大統領だって夕飯の献立ひとつで一喜一憂するさ。
 大事なモンは人それぞれってな。」
「う~、うちはあんまり戦いたくないんだけどな~。
 勢い余って世界樹まで壊しちゃったらまずいかも。」
「だがあちらさんはやる気だぜ?
 典子ちゃんはおとなしく樹海の深層に散ることを選ぶのかい?」
「そんなことはないけどね!」




「かくしかで世界樹と融合したヴィズルと戦うことになったのは
 理解したがの。なんでワシ?」
「アタッカーがうちと和田ちゃんだとメインウェポンが毒だから…。」
「世界樹がマジ死にしちゃうんじゃないかってビビってるのよ。
 光くんメイン、典子ちゃんの毒は補助ってかたちにしてみましょ。」
「ふむ。何だかこの面子は久しいのう。
 気合を入れていこうぞ。」

VS世界樹の王戦術
ダークハンター10ブーストアップなど/10重苦の呪言
バード
攻撃用補助10火劇の序曲、10火幕の幻想曲
守備用補助10癒しの子守唄、10防御隊列
その他1沈静なる奇想曲、10禁忌の輪舞曲、10アナコンダ
パラディン10渾身ディフェンス、10オートガード、10パワーディバイド
備考: パラディンは即死・腕封じ耐性装備、掃いて捨てるほどのアムリタ

「<癒しの><防御隊列>、<渾身>で守りをかためて、
 アタシはずっとパワーディバイドね。
 ヴィズルは物理攻撃しかしてこないから、これでそこそこ安泰よ。」
「ちなみに戦闘のいちばん最初に<火幕の>を使っておくよ。
 そうすれば三つの補助のジャマにならないよ~。」
「何というかワシはアレじゃな、
 ヒマさえあればただただ殴るだけの撲殺マシーンじゃ。」
「アタシにアムリタ使うのも忘れないで欲しいわね。」
「この勝負、ガソリン(アムリタ)切れさえ起こさなければいけそうだよ!」




「結局、メインウェポンは典子くんの毒になっとるぞい。」
「そうね。結構補助かけ直しとか回復が忙しくて、
 光くんはあまり攻撃できない上に、できても一発300ダメージ…。」
「う~どうしようどうしよう。
 うちの毒、1ターンにつき1,000ダメージだよ!」
「喜びなさいよ。」
「うちのせいで世界浄化マシーンたる世界樹が突如
 毒を散布しだし、大地が毒の沼に沈んだりしたらどうしよう…。」
「新しく世界樹でも作ったらどうじゃ?」
「あははは!」




「終わった、のう。」
「この戦闘で世界樹本体にダメージがあったか否か、
 やっぱりアタシ達じゃ分からないわね。
 だから気にすること無いわよ典子ちゃん。」
「しかし、これでエトリアは衰退してしまうのかのう。」
「…さあね。アタシとしては、こんな樹海ほかにないんだから、
 客足が途絶えることなんてないと思うけどね。」
「確かに冒険者の足は多少遠のくかも知れんが、
 それだけでエトリアの経済が回らなくなるかといえば、のう?」
「それより、うち達エトリアのトップを始末しちゃったけど、
 街から無事に出られるのかな?」
「あ。」
「あ。」


普通に典子・和田の毒攻めにした方てっとりばやいと思うが、まあ、ラスボスは最初のメンバで倒したかったという心情的理由によりこのメンバになりました。


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