概要

親愛なるルームメイトが貸してくれたので読んだ。

これは短編集だ。サマリと感想を書く。

 

サマリと感想

 

恩田陸『あまりりす』

  • 大学の教授、長岡さんが亡くなってから一年。「偲ぶ会」に参加してみたら、どうも長岡さんが亡くなった理由は異常なものっぽい。なんかみんな言いたがらない。でも酒が入ったころ聞き出してみたら、あまりりすとかいう化け物に殺されたようだ。そんな話をしていたらあまりりすが続々と集まってきて……どうなったかは不明。
  • ……いや、あまりりすって何なのか、襲われる条件が何なのかが重要じゃん。そこで終わりかよ! って言ってたらルームメイトに「ホラー読むのに向いてないですね」って冷笑された。
  • あまりりすの名前を呼んじゃいけないって知っているハズの村民たちがべらべら喋っているのが謎。

 

芦沢央『妄言』

  • ルームメイト「きみにこのあと貸す予定の本にも収録されている話なので読まなくていいです。」

 

海猫沢めろん『破落戸の話』

  • ごろつきと言うには上品な謝花 (じゃばな) さんが、ライターの M さんに怪談話を話してくれる。ライターにとって、そんなネタをたくさん持っている謝花さんは逸材だ。色々聞き出すんだが、ついつい M さんは怪談話を理屈だてて説明しようとしてしまう。それでちょっと喧嘩しちゃって別れるのだけど、それ依頼謝花さんには会えていない。
  • 謝花さんの過去の話もあるし、現在の謝花さんと M さんもいろいろ動くし、両者になにか関連があるのでは……と考えることができて楽しめた。

 

織守きょうや『とわの家の女』

  • 「とわの家」は置屋さんだ。芸姑や風俗嬢の店のことね。そこの女と恋愛してはいけないと周りのみんなは言う。「とわの家の女と寝ると死ぬぞ」とまで言われる。ただ住野さんは寝てしまう。すると女が死んだ。
  • ……いやいや。さすがにこの話には、どうして死ぬのか、っていう説明が必要じゃん?

 

小林泰三『自分霊』

  • 不良女学生稟奈ちゃんは、浪人するわ遊び呆けるわでしょうもない小娘だ。あるとき未来の自分を名乗るメッセージを受け取り、生活についてのアドバイスを受ける。かなりまともなアドバイスであったが、稟奈ちゃんは未来の自分がろくな生活をしていないのを察し、「そんなあなたに従う気はない」とアドバイスを無視する。そして未来、ろくな人間にならなかった稟奈ちゃんは、全財産をはたいて未来のシミュレーションゲームを始めて、その中で過去の稟奈ちゃんを再現し、自分とは違う人生を歩ませようとする。が、言うことを聞かずそいつもしょうもない生活を送る。
  • 稟奈ちゃんがバカすぎて読むに耐えない。ろくな生活を送らなかったことで自分がひどい目に遭ったので、過去の稟奈ちゃん (過去ではなくシミュレーションだったというオチはあったけど) には同じ轍を踏んでほしくない、って話じゃん。なんで「あなたみたいになりたくない」って話になるんだよ。

 

澤村伊智『高速怪談』

  • 数人で一緒に、東京から大阪まで自家用車で帰省する。交通費を割り勘するので、とっても安く帰省できる。ヒマなのでひとりずつ怪談話をしようってことになり、道中は楽しく過ごせる。その途中、高速道路で女を撥ねてしまう。その女の顔が、道中に落書きで書いた顔にそっくりでビビる。

 

前川知大『ヤブ蚊と母の血』

  • あるとき母親が蒸発し、父親は育児放棄。息子のアユムくんは食糧危機に陥る。しかし家庭菜園に野菜がたくさんあったので、なんとか食いつないでいけた。貧相な食生活にも関わらずスクスクと育ち、中学生になるころには不良の親玉をぶちのめせる体格を手に入れた。しかし母親は帰ってこない。とある日父親を締め上げてみたら、「母親は別の男と暮らしてる」とゲロった。アユムくんはそれを認められず、走り去って終焉。
  • この話が一番好きだった! クソみたいな家庭環境、寄り添って対等に話してくれる学校のセンセ、家庭菜園で自活しようという発想、暴力を使うが暴力にのまれないアユムくん、好き! やっぱり物語は共感できるキャラだよな。

 

北村薫『誕生日 アニヴェルセール』

  • 輝美 (てるよし) と寿家 (ひさいえ) の双子の兄弟。輝美が兄であり家督を継いだ。でも多分寿家のほうが本当は兄だ。なんでかっていうと、輝美と寿家はフランス語の thermidor (テルミドール = 熱月、7月中旬から8月初旬) と juillet (ジュイエ = 7月) をもじった名前だ。ふたりの誕生日は7月31日だが、実は寿家が31日に生まれ、輝美が1日の0時すぎに生まれたのだろう。……以上が寿家の推察である。
  • いや、謎。意味不明すぎるので箇条書きで整理する。
    • テルミドールが8月を意味するなら、輝美が8月1日に生まれたという仮説が成り立つ
    • けど7月31日ってテルミドールとジュイエどちらにも含まれてるじゃん。7月31日に生まれた双子に「7月」の名と「7月中旬から8月初旬」の名をつけるのって至って自然だと思うが
    • 「となればことは明らかだ。二人の生まれた時が合わせた掌をずらすように左右に分かれて行く」って部分で、「なんでやねん」って思ったぞ。何もずれてないじゃん。ぴったりくっついたままじゃん
    • 家族にとって、「本当は兄の寿家を弟ということにする」理由がないじゃん
    • 名付け親である父親が、どちらが兄かを家族に隠していた……みたいな経緯があったならまだしも、父親が死んだのは輝美が20で家督を継ぐ前くらいなのだから、明らかに「兄の輝美が家督を継ぐ」イベントに父親も関与してるじゃん
  • ようは寿家は兄ちゃんにコンプレックス持ってて無理矢理こじつけてでも何かひとつ勝ちたかったって話じゃねーのかな。哀れ。