今度はファンタジーを読んだ。いちおうこの読書感想文の習慣は、読んだ本の内容を忘れないために書いてたりもするので、話のサマリーを書く。ネタバレをするのでご注意ください。


オファロンという国がきゃらきゃら栄えている。
あるとき隣国から攻撃を受けることになり、オファロンはこりゃヤバイと焦る。
そこでオファロンはトガミリョなる民族の力を借りることにする。
トガミリョさんたちは闘蛇なるワニみたいなパネエ獣を飼いならしていたからである。
闘蛇の部隊はめちゃめちゃ強かったんで、オファロンはトガミリョたちにお願いして闘蛇をドンドン増やすことにする。調子くれたオファロンの王様は近隣の国々をイケイケで征服する。
それはどうよと思ったトガミリョたちが叛乱を起こし、王様は山へグッバイする。

王様は山中で謎のパツキンの人々と出会う。
かれらは王獣なる闘蛇の天敵を飼いならすパネエ連中であった。
王様は「王獣でトガミリョたちを倒してくれたら国はくれてやる」と契約を交わす。
やがて闘蛇部隊と王獣部隊は激突する。
が、その殺戮の応酬は予想をはるかに超えてヤバイものになった。都は消滅し、そこには勝者も敗者も存在せず、ただ死骸が視野の果てまでズラリと並んでいるだけであった。
これを目の当たりにした僅かな人々……トガミリョさんたちは惨劇のきっかけとなった闘蛇の操り方を封じて放浪へ、山中にいたパツキンは山脈を超えて新しい国を作る。

新しい国リョザはパツキンさんが作った、王獣を象徴に据えた、争わぬ国。
あんだけの惨劇を見てきただけあり、無欲で民に慕われる王様である。
とはいえ隣国が攻めてくるという脅威に再び晒されてしまう。
不戦を掲げる王様は「それもさだめよ」と首を差し出すんだが、大公さんが「ちょっと待て」と王様を諌め、隣国と戦うことになる。
その際に大公さんは王様からスペシャルな笛をもらい、闘蛇を使役し、隣国をバッタバッタと撃退する。以降この国は穢れ無き象徴たる王家と、軍事を司る大公家とで構成されることになる。
ただし闘蛇も王獣も増えすぎると前みたいにヤッバイことになっちまうので、王様は繁殖を阻害する薬の使用を飼育者に義務付ける。ただし薬の効能は秘密、表向きは「プロテインみたいなもんだよ」といった感じである。

ちなみにオファロンで生き残ったトガミリョさんたちとパツキンさんたちは合流しており、この間もすんげえ山奥でほそぼそ暮らしている。王様はそっちの連中からコッソリ支援してもらっており、件の笛もそっちからゲットしたもの。

近隣に闘蛇なんか操れる国はないんでリョザはメチャ繁栄する。
が、やがて大公領のとある人々が「戦ってるのは俺らなのに王家はなんもせずトップ気取りかい」と不満を募らせ、王家を攻撃する。
王家の小さい娘は生き残ったものの、そのときの王様は死ぬ。そのせいで代々伝えられてきた山脈の向こうの悲劇のハナシは途絶えてしまう。
上述の薬の理由を知るものもいなくなってしまう。ただ規則は規則として残り、飼われた闘蛇たちが繁殖することはなかった。
そして軍の人たちは「繁殖すれば軍はもっと強くなるのになーなんで繁殖してくんないんだろう」と思いながら暮らすことになる。

あるとき才覚溢れる少女が、純粋な興味から薬の本当の目的を発見し、繁殖に成功してしまう。
各地を放浪するトガミリョなんかは「繁殖はマジやべえからやめろホント」と少女を止めるのだが、動物の自然な生を愛する少女は「そんな風に人の都合で生き物を縛るのはイヤです。ようは国にバレなきゃいいんでしょう」。
当然バレてしまい、やがて繁殖に成功した隣国の闘蛇部隊とリョザの王獣部隊が激突。
皆が目の当たりにしたその戦闘はただの戦闘ではなかった。野生ではありえない数の天敵に遭遇した闘蛇は発狂し、毒の霧をバラまいたのである。これがオファロンを滅ぼした災厄の正体であった。
幸い昔よりも規模の小さい部隊だったため国が滅びるほどではなかった。生き残った人々はこの事件を歴史書と記憶に刻み込み、超絶危険な獣たちは軍から解き放たれる。
かくして少女の願い通り、獣たちは自然な生を得たのである。


みたいなお話。ファンタジーなのだけど、ひとつひとつの出来事が論理的に結びついていて、それを丁寧に紐解いていくような物語展開は読んでいて気持ちよかった。サマリーがサマリーってレベルじゃねえほど長くなってしまったのもそのせい。簡略化しすぎるとハナシが繋がらなくなっちまうので。だども著者の言葉によると「物語を書くとき、わたしは結末までの構成をあらかじめ作ることはしません」。マジか。(語りの展開のことを言っているのかもしらんが。)
本編を4冊に、外伝が1冊というなかなか分量のある物語だったが、面白かった。生物学の徒が中心になって進む話なので、ちょこちょこ生物学的な豆知識が出てきたのも楽しかった。同著者の作品に「精霊の守り人」という名の知れたファンタジーがあるので、いつか読んでみたい。