図書館でふと見かけたので読んだ。ICOは俺がプレステ2で最初に遊んだゲームでなあ。そのころのことをちょっと思い出せてよかったよ。いつも通りサマリと感想を書く。



主人公のイコくんは生まれながらに角をもち、とっても頑丈に健康に生まれた。しかしそれは霧の城に捧げられるニエの証であった。彼は大きくなると霧の城へ送られてしまうが、いつものニエと違うところがひとつ。偶然発見された、光輝の書なる光のパワーアイテムの力を秘めた御印をイコは持参することになったのだ。その御印の力で、彼は霧の城に送られ石棺に閉じ込められても脱出することができた。さて霧の城から出てしまおうというところで彼は、霧の城の女王の娘が幽閉されているのを救助する。なんとこの子、ヨルダに触れると霧の城の過去の様子を幻影として観ることができるのである。
過去、この城の女王は魔神の手下という顔を隠し、国を繁栄させていた。が、諸外国は女王の闇の顔に気付き、戦争を仕掛けたのだ。その折、女王の娘たるヨルダは女王に反目、ともに霧の城を滅ぼす手伝いをしたのだが、最後の最後で情にほだされ女王を生き延びさせてしまう。諸外国は女王の魔法のパワーで手痛い攻撃をくらってしまい、恐慌に陥る。彼らはヨルダを責め、彼女を霧の城へ送り返し、彼女を媒体として時を止める魔法を城にかけ女王を閉じ込めることにより、難を逃れようとした。ニエのシステムが生み出されたのはそのときで、実はニエというのは女王を閉じ込めるというよりは、ヨルダを封じ込めるために使われるものだったのである。最初のニエには、その際ヨルダと仲の良かった、角をもった異国の騎士がすることになった。自分と自分の子孫がヨルダを見守り続けましょう、と言って。それがイコがここにいる理由だったのだ。
過去をしったイコに、女王は言う。私がこの封印を唯々諾々と受け入れたのは、拒否する必要がないからだと。もともと自分は魔神への供物をつくるためガンガンやっていたが、同じ人間に犠牲のニエをつまみ出し、異形の姿に変えて海のかなたに封じ込め、代償にひとときの平和を享受する、人の子が進んでそのような罪を犯す、この地上はすでに魔神への供物たりえているのだと。イコを殺さないのも、その必要がないからだと。イコをニエとしているのは女王ではなく、外の世界の人々だったのだ。だがもしイコが本当に討つべき敵、偽りの歴史をでっちあげ、イコの血族に過酷な義務をかしてきた者たちへの怒りに立ち上がるならば、女王が守護となり、その力を与えんと女王は提示する。
煩悶するイコであったがついには女王を討つ覚悟を決め、光輝の書の力を秘めた封印の剣でもって女王を倒し、霧の城を滅ぼすことに成功したのだった。



一番の見どころのひとつである、真実をしったイコがどの道を選ぶのか煩悶するシーンだけど、そこで打倒女王を選ぶ部分の描写が気に入らない。そのシーンでイコは、「女王そのものである霧の城内にいたら奴の思惑の中だから、とりあえず外に出よう」と海にダイブし、封印の剣が外の世界の情景を見せてくれたことで唐突に目覚め、なすべき事は何か理解する、そうなんだけど、意味がわからんよ。「女王の思惑に囚われた状態」と「封印の剣に目覚めさせられる」のって同じようなものじゃねーかな。どっちもマインドコントロールだよ。
なぜ「目が覚めて」打倒女王になるのかといえば、まあ、イコの血族はもともと光のほうの出身だからだろう。だからもともとイコに選択権なんてないんだよな。そしてイコは、これまで帝都の言われるままニエとして扱われてきたように、光の世界に闇を倒す道具として扱われることになる。「従っている意識がなくても無意識に従ってしまっている相手」が帝都から神とか運命にスライドするだけだ。イコが女王に「もう騙されない!」と毅然とした言葉を投げるシーンがあるけれど、そこなんかは典型的な傀儡っぷりだ。帝都のほうもイコを騙してるんだからな。むしろ女王のほうが彼に嘘をついた度合いは少ないんじゃねーか。
そのへんのなんやかんやが、聞こえのいい描写でふわっと流されているのがあまり気に入らなかった。

まあでも、霧の城内で得た情報がまるきりすべて嘘だったという線もあるかな。霧の城はすべて女王の思惑に支配されてるわけだから、そういうこともありえるかもしれん。エピローグで、砂浜に打ち上げられたイコが同じく打ち上げられたヨルダと再会するシーンがある。そこで、ヨルダが、今まで得てきたのとまったく違う本当の真実を伝える……なんてことがあったら面白いかもしんない。