概要
友人に紹介してもらったゲームだ。音楽がよくて、シナリオもよいのだと。
サマリと感想を書く。きっちりネタバレするので、まずはプレイしてくれ。プレイ時間は4、5時間くらいだと思う。
サマリ
- ジョニーとジョーイの双子が、平和に暮らしている。
- ジョニーは里山でリヴァーに出会い、星空と月、兎の星座を見ながら語らい、 “来年もここで会おう、会えなければ月で会おう” と約束を交わす。
- ジョーイが交通事故で亡くなり、母親はおかしくなり、ジョニーは β 遮断剤の過剰摂取により記憶を失くす。
- ジョニーはハイスクールでリヴァーを見つけ、不思議ちゃんであるところに惹かれ、付き合い始める。
- ジョニーがリヴァーに惹かれた理由を話し、リヴァーは彼が自分との本当の出会いを忘れていることに気づく。しかしリヴァーは広汎性発達障害を患っており、そのことをうまく伝えることが出来ない。
- リヴァーはジョニーに約束のことを思い出してもらうため、兎の折り紙を作り続ける。そのことがジョニーを気味悪がらせる。
- また、リヴァーは世間に馴染めない自分と、夜空の星星、また見捨てられた灯台を重ね合わせており、灯台のそばに家を建てて暮らすことに妄執する。
- そのうち、リヴァーに病気が見つかる。ジョニーはリヴァーの治療費のため、家を建てることを諦めようとする。しかしリヴァーは拒否し、灯台を見守り続けることをジョニーへ強いる。
- リヴァーの死後、ジョニーは彼女と分かり会えなかったことに苦しみ続ける。一方で、なぜか、 “月へ行かなければならない” という望みを持ち続けていた。
- さて、ジークムント・ライフジェネレーション・エージェンシーは、人の死の間際に、その記憶を調査し、その人の記憶の中で、望みを叶えさせあげるサービス事業を営んでいる。エージェントの Dr. ニール・ワッツと、 Dr. エヴァ・ロザリーンは、ジョニーの依頼により、本人さえも知り得ないその人生の全貌を解明する……。
所感
めっちゃ感動した、って話から。
- 都合のよい記憶障害と発達障害に支えられているストーリー、というのはやっぱり所感として書いておかないとだけれど、そんなのはいい。ともかく切ない! いくつかの要素は自分の実体験と重なることもあり、切なさにどうにかなっちゃいそうだった。友人から、シナリオが良いとオススメされていたこともあり、はじめから物語に入り込んでプレイできた。映画を観るように熱中した。
- “気持ちをうまく表現できないだけで、何も感じてないわけじゃないんだよ。” “あの子はちゃんと、あんたのことを大切に思ってる。そう信じてやるしかないんだよ。”
- 不気味な兎の折り紙も、謎のカモノハシのぬいぐるみも、記憶を遡るたびに愛のオブジェクトへと本質を変化させていくことが素敵。
- “あの子はちゃんと、あんたのことを大切に思ってる。” が胸に刺さる。全貌を把握した我々には、愛の姿がそこに見えるのだが、リヴァーはそれを伝えることには失敗しているし、ジョニーはそれを受け取ることに失敗している。それが切ない。ふたりは人生に失敗している。ある意味で。
- その失敗した人生を復活させることが、主役ふたりの仕事だ。そのストーリー構造が見事だったよ。
- “うん。それから?” リヴァーはそう尋ねるたびに、ジョニーが当時の記憶を取り戻してくれるんじゃないかと期待していたのだろうか。……いや、それは美化しすぎかな? リヴァーはただ、 “それから?” が癖なのかも。
ジョニーとリヴァーのパーソナリティについて。
- ふたりを繋いでいる約束が切ないのは上述した通りだ。でも、このふたりはそれぞれまた別の、特有の望みを持っている。ジョニーは “特別な存在” に憧れていて、リヴァーは人と思考回路が違うことから、星星や灯台に共感する。ふたりは、それぞれ、相手を愛しているけれど、またそれぞれ、自分の幸せを追い求めている面もあるのだ。これらのキャラクター性が、ふたりの物語を色鮮やかにしているよな。
- ふたりが相手に求めているものも違う。ジョニーは、もっと分かりやすい愛をリヴァーへ求めている。リヴァーは、過去の約束をジョニーに思い出して欲しいし、また、自分と重ね合わせた灯台を大切にして欲しいと思っている。
- 物語を追っていくと、ジョニーがやや自分勝手にも見える。親友のニコラスも彼を責めたりする。 “じゃあおまえは、あの子が好きなんじゃなくて、あの子が「持ってるもの」が好きってことか?” “…それって、人としてどうなんだよ?” 我らが Dr. ワッツも “自分がイケてる人間になりたいがために、他人を食い物にしたってこと…?” と引いている。まあでも、それって普通じゃね? 人の価値って、その人間が持っているものの価値なんだから。
- とはいえ、だけど、彼は、リヴァーの分かりやすい望みにはきちんと応えてあげているんだよな。究極のものだと、治療費よりも灯台を見守る家の建築費用を優先してほしい、というリヴァーの願いに殉じている。 “僕には、理由を理解することはできそうにないけれど…君の願いは、ちゃんとかなえた。” 彼は自分にも他人にも素直な人だと、ぼくは評価するよ。
- 彼は異質なものに憧れる一方で、異質なものをそのまま受け入れることはできなかったんだ。
- わかるよ、ぼくも分かりやすいものが好きだ。コミュニケーションは全部マークダウン記法で行いたいほどだ。
サマリの補足。
- 広汎性発達障害は、以下の疾患を含む障害らしい。
- 自閉症障害 (対人能力の質的な障害)
- アスペルガー症候群 (コミュニケーションや興味が特異)
- レット症候群 (女児に起こる。知能、言語、運動、精神における重度遅滞)
- 小児期崩壊性障害 (自閉症が小児のうちに発症したもの)
- 特定不能の広汎性発達障害
- 作中に名前のみ登場するトニー・アトウッド氏は、実在の心理学者。
- β 遮断剤は、高血圧とか不整脈のための薬。交感神経の β1 受容体を遮断することが、その機能。記憶に影響を及ぼす副作用が実在するのかは知らん。
メタ的な話。
- ストーリーの構造の面では、映画の “メメント” をリスペクトしているのだろうか。 “メメント” というオブジェクトが登場するし、記憶を過去へ遡っていく構造が類似している。
- 途中で、エヴァが “……デジャヴ?” って呟くシーンがある。このことから、ゲーム中で現実世界として描かれている場所すら、誰かの記憶の中だったりする? と深読みしたけれど、そんなことはなかったみたい。
- トロコンゲーマーだから、 “メメント” のミニゲームをベスト・プラクティスでクリアしたら、なにかあるのかな? また、 “もぐらたたき” のゲームを完全攻略したら、なにかあるのかな? と思っちゃう。だけれど、トロフィーは用意されていないようなんで、トロコンゲーマーだから、気にしない。
- メニュー画面にバグがあるぞ。 “メモ” がメモのタブではなく、アイテムのタブへ格納されている。
- エンディングムービー中にゲームが
NoMethodError
エラーで落ちたのは何なんだい?
NoMethodError
To the Moon
Script 'Interpreter 3' line 263:
NoMethodError occured.
undefined method 'callback_received'
for Achievements:Module
このエラーメッセージは Ruby が出しているものだな。 RPG ツクールの裏側が Ruby Game Scripting System だからか……。これはだな、以下のどれか、あるいは複数の対処を行うことで解消したよ。
- Steam > ゲーム名を右クリック > プロパティ
- インストール済みファイル > ゲームファイルの整合性を確認 をクリック
- 一般 > 言語 > English にする
- Steam > ゲーム名を右クリック > ローカルファイルを閲覧 > なんかまあこのへんからここ↓へ行って (Mac の場合)、中に入っている
ttf
ファイル (フォント) をインストールする
~/Library/Application Support/Steam/steamapps/common/To the Moon/ToTheMoon.app/Contents/Resources/Fonts
まあでも、エラーメッセージから推測するに、整合性確認が効いたような気がする。