読書はなるたけ雑食に行いたいと俺は思っている。その一環として、本を自分で選ぶのではなく、知り合いのフェイバリットを聞いてそれを読書に選んでみた。サマリと感想を書く。



ソヴィエトの新型原子力潜水艦レッド・オクトーバーが任務のため海に出る。艦長はとっても優秀で信頼されてるラミウス大佐だ。ソヴィエトの連中はみんな色よい結果を期待していたが、ラミウス大佐から届いた手紙を見てぶったまげる。「自分はこれからレッド・オクトーバーでアメリカに亡命します」。実はラミウス大佐は、子供のころからずっとソヴィエトの社会制度に疑問を抱き続けてきたのだ。ソヴィエトは大量の潜水艦を放ち、レッド・オクトーバー撃沈を試みる。しかし伊達に新型潜水艦の艦長を任されているわけではない、ラミウス大佐は彼らのサーチをことごとくすり抜ける…。
なーんて事態をアメリカが見過ごすはずがない。大西洋にメッチャ潜水艦がはびこってるぞ、なんだなんだとアメリカ軍は色めき始める。そんな中CIAアナリストのライアンさんは事態を正確に読み解き、ラミウス大佐の亡命作戦に気付く。アメリカ軍としてはレッド・オクトーバーの情報が欲しいし、なんとしてもソヴィエトより先にレッド・オクトーバーを見つけ出し、亡命を成功させたいという流れになる。
と、そのころ原子力潜水艦ダラスでは、有能ソナー技師ジョーンズくんがとっくにレッド・オクトーバーを見つけ出していた。報告を受けたライアンさんはレッド・オクトーバーのそばまで飛び、ラミウス大佐とコンタクトをとり、共同で亡命作戦を進めることにする。作戦はこうだ。ラミウス大佐が艦内で放射線漏れ騒ぎを演出し、何も知らない部下たちを驚かす。ライアンたちアメリカ軍は彼らを救出しに来た体をとる。ラミウス大佐が部下たちに、機密保持のためレッド・オクトーバーは自壊させると宣言する一方、アメリカ軍は不要の潜水艦をレッド・オクトーバーの一部を付着させて爆破する。これでラミウス大佐はひっそりと亡命でき、アメリカ軍はレッド・オクトーバーをゲットできるというわけである。
かくして作戦は成功し、ラミウス大佐は自由の国アメリカの土を踏むことが叶ったのである。めでたし。



ものすげーアメリカ礼賛とソヴィエトdisりだった。ソヴィエトの相互監視システムの醜悪さの描写にはじまり、アメリカと比較した技術の劣度、人々の圧迫された感性、そこらへんをものすげー滑らかに植え付けてきた。いやー話のテンポがいいしキャラの喋りも快い進み方をするんで、サクサクと植え付けられちゃったぜ! ヨットに乗って原子力潜水艦のソナーをすり抜けたいわ~超すり抜けたいわ~(レッド・オクトーバー・ジョーク)。

冒頭の知り合いいわく、あまりに軍関連の描写が良いので、著者トム・クランシーさん、当時ホワイトハウスに呼び出しくらって「なんでこんなことまで知ってる」と詰め寄られたとかなんとか。確かに、どんだけ調べたらこんなの書けるんだ、ってくらいの重厚な描写だったよ。って最近感想文のたびにこれ書いてね? でも今回は「どんだけ」なのか知り合いが教えてくれた。著者さんは保険代理業を営むかたわら9年かけて書いたそうだ。びっくりだ。

印象的なシーンは、ライアンがラミウスに初めて出会うところだった。「目の前の男はライアンより背が低く、太っていた。肩章には三つの星がつき、飾り紐が(中略)すると、この男がマルコ・ラミウスか……」。このシーンは下巻の中盤なんだけど、そこまでラミウスの外見が描かれることってずっとなかったんだよね。でもラミウスの半生や思いはずっと描かれていたんで、なんというか、ずっとネトゲで遊んでた相手と初めてオフ会したときみたいな感慨があった。

あと、ずっとラミウス大佐が主人公だと思って読んでたんだけど、
知り合い「主人公のライアンだけど、著者のほかの作品でも出てくるんだよ」
俺「え!? 主人公そっちなの!?」
知り合い「え!?」
ってのも印象的。