別に人に限らずそうなんだけど、ものごとはすべて多面体だ。
俺には嫌いな奴、Aくんがいる。そしてあちらも俺のことを嫌っている。たまたま鉢合わせた日にはもうサイテーですよ。だってAくんはゴミ野郎なんだもの。しかし、そんなAくんにも、彼を愛する家族や恋人、友達がいる。かれらは、俺には見えていない、彼の素敵な面を見ることができているのだ。そして俺にも素敵な面はたくさんあるのだが、その面をうまくAくんに見せることができていない。だからAくんも俺が嫌いにしかなれない。つまり、「サイテー」なのは俺のせいということになる。べつにAくんがゴミ野郎だからではない。ゴミ野郎など何処にもいない。ただ、人々にはそれぞれたくさんの面があり、人々にはそのうち限られた面しか見ることができない。それだけの話なのだ。

この考えを利用すると、人が嫌いになれなくなる。ムカツク奴ができたとき、「まあまてよ、ちょっと首をもたげてそいつの別の面を見てみれば、一気に大好きになっちゃったりするんじゃね? そして、その面を見ることができない自分の無能を棚に上げてそいつをクズ扱いしてる俺って結構見下げた男ってことになっちゃわね?」と考えるようになるからだ。いちいちむかっとするたびにイライラしないようになる。これが多面体理論の効能だ。
ちなみに、嫌いにもなれなくなるが、好きにもなれなくなる。これが多面体理論の別の面。


以下の記事からリンクされています