例によって雑食読書を志すゆえ、おすすめ本を知り合いに聞き込みした。サマリと感想を書く。



高校生の守屋くんはある日たまたまユーゴスラヴィアからやってきたマーヤちゃんに出会う。マーヤちゃんの目的は、バルカン半島の6共和国を統合し7つめの国ユーゴスラヴィアを生み出す一助を担うことだ。そのために各国の文化を学んでいるマーヤちゃんだが、今回日本で面倒をみてくれる予定だった奴が死んじゃってたもんで途方に暮れていたのだ。守屋くんは彼女に宿を紹介してやり、それが縁で二ヶ月の交流が始まる。
ところで守屋くんは何事にも真剣に打ち込めない子で、それがちょいとコンプレックスであった。そんな彼だけど、壮大な夢の実現のため、あらゆることに興味をもち、日本の文化を調査奮戦するマーヤちゃんを見て揺り動かされていく。彼女と同じ目線に立ちたい、別の世界へ飛び立ちたい、との思いで、守屋くんは自分もユーゴスラヴィアへ連れて行ってくれるよう頼む。マーヤちゃんはその懇願を一蹴して、国に帰ってしまった。
一年後、バルカン半島は戦火に包まれた。その頃には、さすがに、観光気分であんなお願いをマーヤちゃんにした自分はアホだったなと守屋くんも悟っていた。だが、今の自分なら彼女のそばにいられるかもしれんと一念発起、守屋くんはユーゴスラヴィアへ渡りマーヤちゃんを紛争から救い出しにゆく決心をする。しかしその決意も虚しく、ユーゴスラヴィアからマーヤちゃんの訃報が届くのだった。



今回は俺たちの好きな「成長済物語」じゃなく、「成長物語」だったわけで、特に気に入ることはなかった。ただし本作は日常系ミステリで、各所に散りばめられたささやかな謎と、推理ショーは楽しめた。ミステリ大好き。

俺としては主人公がマーヤちゃんではなく守屋くんだったことが残念だったな。どちらかといえば共感できるのはマーヤちゃんだろう。彼女が主人公だったら好みの「成長済物語」だったはずなんだが。特に共感できたのがサマリにも書いた、守屋くんに国への同行をお願いされるシーン。俺も似たような経験があり、懐古心をくすぐられたぜ。「私もつれていってくれ」。マーヤちゃんが守屋くんの頓珍漢な覚悟を一蹴したのに比して、俺はそういうときは快諾ばっかりしちゃうタイプ。やっぱり嬉しいからね、そういうことを言われるのは。でもそうやって始まった関係が長続きしたことは一度もない。作者もそういう経験があるのかしらん。



巻末の解説で知ったのだけれど、この作者って『氷菓』を書いた人だったのな。道理で、共通した日常系ミステリの香りが漂っているわけだ。ついでに『春期限定いちごタルト事件』の作者でもあったようだ。ああー、そうそう! あれも、こういう風味だった! とても読みやすく感じの良いミステリだったから、ついつい立ち読みで読破しちまったんだよ。ただこういうあっという間に読み終わってしまう本ばっかり選ぶと読書感想文が嵩んで大変だからな。次は読みづらいのを選ぼう。そういう事情から小難しい本を読まざるをえなくなるあたり、この「本読んだら感想文をかく」ってシステムは成功していると思う。