まったくやべえ一冊に出会ってしまった(震え声)
サマリーと、そして主人公ジョージくんに俺がどんだけドン引きしたか書く。


公明正大でアダ名は「君子」、そんなアラサー河合譲治は、カフェで働く14の少女を見初める。最初のキモいポイント。
どうもジョージくんは西洋人に憧れており、なんだか西洋人っぽいツラ構えの少女、ナオミを気に入ったそうだ。ジョージくんはナオミをデートに連れ回し、「学問に興味があるなら僕が習わせたげるよ」と言葉巧みに奉公をやめさせ同棲する。ジョージくんはナオミを教育し、自分好みの女に育て上げた暁には妻にしようという腹積もりである。あの、俺最近こういうハナシをニュースで観た覚えがあるんだけど。「倉敷女児監禁事件」って言うんですけど。キモいポイント2。
ジョージくんは家を買い、なんだかんだ贅沢に暮らしてるうち、思ったよりナオミちゃんは馬鹿で態度も悪いことがわかってくる。よその男とつるんだり、他の人を小馬鹿にしたり、である。ジョージくんは教育に失敗したと落胆する。浮気とかしまくるんでジョージくんも堪忍袋の緒が切れてナオミを追い出すんだが、一時間後には「なんてことをしちまったんだ帰ってきておくれナオミナオミ」とか言い出す始末。キモい。
ナオミのほうもジョージくんが自分にメロメロなのを分かっているので、いろいろと誘惑してかれを屈服させる。「これから何でも云うことを聴くか」「うん、聴く」「あたしが要るだけ、いくらでもお金を出すか」「出す」「あたしに好きな事をさせるか、一々干渉なんかしないか」「しない」。そしてよりを戻し、再び一緒に暮らしだす。ウヒョーキモい。
キモいが、ジョージくんは「ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方ありません。」と堂々たる態度である。


俺はこの男に、「一貫性がねえな…」と終始ドン引きしながら読んでいたんだが、読了後に振り返ってみると実は、本懐に関してはかれは一貫していることに気付いた。
ジョージの本懐は「自分好みの女を育て妻にする」ことだ。最終的にジョージくんは「自分好みな女」を「妻」にしているわけだから、目的は達している。終盤のナオミの特徴は、淫乱、乱暴、浪費癖である。けれども振り返ってみると、ナオミはもともと陰鬱で無口な感じの子で、貧相な煎餅布団で寝ることに抵抗もないような慎ましい感じの子であった。転機はジョージくんの教育とかれがナオミにさせた贅沢である。ジョージくんは「彼女が他日立派な婦人になるであろうと云うような望みは、今となっては全く夢であったことを悟るようになった」などとホザいているが、この稀代の変態が望んでいたのは立派なレディではなく、サディスティック女王様だったのだ。そしてその目論見は見事成功した。
まあ、自分ではその本当の望みには気付いてなかった様子ではあるが。マジメなヤツほど裏でどんな性癖隠してるかわかんなくて怖いねえ。


つーか、このジョージくんは終始ナオミの肉体に誘惑され続けているからキショいのよな。行動に一貫性があることと、キモいことは矛盾しない。毅然とした態度でナオミを追い払ったときにはこちらも肩の荷が下りる思いがしたのに、再び訪ねてきたナオミの色香にあてられ、「その誘惑を心待ちに」してるから酷い。俺は一貫性のない理性の弱い男が嫌いだ。キモいからだ。こんな男の小説が日本を代表する文学作品になってるとか男の立場がないというかとてもイヤだ。
痴れ者の愛ってのはぴったりなタイトルだと思うな。


感想ではないけれども、ちょっと面白い箇所があったんでそこだけ。
浜田くんがナオミに関して、「みんなが慰み者にしているんで、とても口に出来ないようなヒドイ仇名さえ附いているんです。」と言うところがあるけど、そこにわざわざ「恐らく、淫売婦や多淫な女を言う俗語『共同便所』であろう」って脚注がついてて大笑いした。べつにそこは解説せんでいいわw


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