サマリと感想を書く。



ある日世紀の大発見が月でなされた。宇宙服を着た、人の死体が見つかったのである。持ち物はとうてい地球上のものではなく、死体の放射性炭素同位元素を調査したところ、彼は五万年前に死亡していたことが分かった。なんなんだコイツは? 宇宙人なのか? しかし、彼の肉体はどう見ても現代人と同じつくりなのだ。別の惑星で、人間とまったく同じような生き物の進化が発生するなんてことがあるのか? いったいなんなんだコイツは。コイツはコードネーム「チャーリー」と名付けられ、彼の正体をさぐるプロジェクトがはじまったのである。

まず調査隊が月をさらに調べたところ、さらに複数のチャーリーの仲間らしき死体が見つかり、その持ち物から、地球のものではない魚の死骸が発見され、チャーリーたちが地球以外の星……それはミネルヴァと名付けられた……からやってきたことが分かる。加えて月がいまクレーターの穴ぼこだらけなのは大量の核爆発のせいであることが判明し、過去、なぞの大戦争らしきものでミネルヴァは爆散したのではないかと仮説がたつ。一方、木星の衛星ガニメデでは謎の宇宙船が発見され、内部ではもうどう見ても人間とは違う、宇宙人の死体と、大昔の地球の動植物の標本が出てくる。その宇宙人はガニメアンと名付けられ、コイツはどうも、俺たちよりもCO2に相当弱い身体を持っていたと調査で明らかになる。 さらに暗号解読班がチャーリーの所持していた日記を解読したところ、かつて月は今は亡きミネルヴァの衛星であったことが判明する。

つなぎ合わせると以下のような結論となる。すなわち、ずーっと昔にガニメアンはミネルヴァで幸せに暮らしていたんだが、なんかの理由でミネルヴァはCO2が大発生してしまい、ヤバイマジ酸素足りない状態に陥る。そこでわっせわっせと宇宙船で地球までいき、CO2に耐性のある地球の動植物を輸入したのである。彼らがCO2を減らしてくれればと願って。残念ながらそのたくらみはうまく運ばず、ガニメアンたちはとっととミネルヴァを去る。残った元地球の連中は環境に適応し、進化し、やがて現代人と同じようなレベルに達する。そのころ大戦争が勃発しミネルヴァは大破してしまうが、たまたまチャーリーたちは月に出張してたんで難をまぬかれたのである。ミネルヴァの崩壊でぶっとんだ月は地球のそばに飛んできたので、現在月は地球の衛星になってるというわけだ。その後チャーリーの仲間は月に残った宇宙船で地球へやってきてネアンデルタール人を滅ぼし、そのハングリー精神を、子孫である俺たちに伝えたのである。



いやーこれはとっても読み応えがある話だった。これだけ重厚な学術的ファンタジーを書くために、いったいどんだけの調べ物を必要とするんだ? びっくりだ。一番最初にまず問題(謎)が提示されて、それを一冊かけて解いていくという構成もわかりやすくて好み。とにかく俺が大好きなタイプのミステリーストーリーだった。あと恋愛がまったく含まれないのも俺にはよかったな。猛烈な勢いで読んじゃったよ。

どうやらこの作者はたくさん著作があるみたいで、とくに『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』は『星を継ぐもの』の続編らしい。これはきっといつか読んでしまうなー。


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