人は多面体であるに並び、俺がよく利用する価値観を紹介する。
別に人に限らずそうなんだけど、ものごとはすべて石だ。
人は世界の一部であり、自然の一部だ。無からポッと現れたわけでもなく、母親の食べた食物がなんやかんやでたまたま人のかたちになった、ただの物体だ。俺たちの考えていることも、聞くところによると電気信号の集まりらしい。電気信号は聞くところによると、電子という物質がうにょうにょ動くことでできているらしい。人のからだも、考えも、すべてそのへんの石と同じだ。風が吹いてそのへんの石がコロッと転がるのも、人が動いているのも本質的に同じである。
この考えはストレスから身を守るのに役立つ。クソムカツクことを誰かに言われても、その状況は、ちょっと風が吹いて葉っぱがそよいだのと本質的に同じことだ。葉っぱがそよいだのと魚がはねて水しぶきが舞うのは違うことだが、どちらも物質がすこし動いただけであり、同じことだ。ムカツクことを言った奴も物質がすこし動いているだけだし、「ムカツクこと」自体も空気という物質がちょっと震えて音になっただけだし、「うわぁ」と思っている自分自身だって物質がちょっと移動しただけだ。なにもかもただの石だ。

この価値観は、高校かそのちょっとあとくらいの頃、どうすればストレスから身を守れるか考えているとき思いついたものだ。ちょっと考えてみると、俺がストレスを感じるのはだいたいが人によるもので、自然や動物によることでストレスを感じることはほとんどないことに気付いた。だったら人も自然として扱えばいいんじゃね? と思ったので、そういうことにした。