知り合いが清水義範という作家さんをおすすめしてくれたんで、著作のなかからテキトーにチョイスして読んだ。サマリと感想を書く。



野田さんはちょっとしたコピーライターさんだ。本業のかたわら、テレビ局の用語委員会に参加されたり、雑誌にエッセイを掲載されたりと各方面でご活躍なさっている。ただこの野田っちだが、議論好きでわりといらつきやすい。「広告コピーが日本語を蹂躙している」という趣旨の論文にイラっときたり、本の校閲作業に抵抗したり、用語委員会で意見を否定されれば頭に血を昇らせ、手を震わせる。まあそんな人なんだけど、プライベートで女性に振られたことでストレスが頂点に達して言語多動性症候群なる奇病に罹ってしまう。愛とか恋とかそういう言葉に近づくと、喋ろうとする言葉の類語が滝のように流れ出したのちぶっ倒れてしまうのだ。けど2年くらいしたら快復して、新しい恋人もできて、どうやら気もちょっとは長くなったようであった。



楽しめた。これまでの読書感想からいって、キャラに共感をもてないと俺は本を楽しめない傾向にあると思う。だが今回はまさにその典型なのに楽しかった。日本語についてのうんちくは読んでて興味深かった。たぶんそういううんちくに興味をもてたから楽しめたのだろう。数字の含む言葉で算用数字を使うか漢字で書くかって問題は答えがでないとか。外国人の名前はちゃんとその国の言葉で放送するのに、中国の名前は日本読みで放送するとか。そういやそうだな、と思った。日本語読みから現地の発音に直そうとすれば、毛沢東がマオ・ツォートンになっちゃって、邯鄲の夢もハンダンの夢になってしまう。そんなことをしたら中国についての日本人の教養は吹っ飛んでなくなってしまうとか。そういやそうだな、と。いろいろ成程と思えて楽しかった。野田っちはキレかけてたけど。

ところで「得々と(語る)」って日本語はじめてしった。勉強になりました。