親愛なるルームメイトとの会話で、ちらっと「マズローの欲求階層」の話が出た。そんなわけで次の読書に選んでみた。気になったとこと感想を書く。この本、めっちゃホメられてると感じる部分があって気分よかった。



マズローさんの心理学説は第三勢力と呼ばれてる。ほかの二勢力ってのはシグムント・フロイトとジョン・ワトソン。
フロイトの考えでは、人間の中では本能と道徳がつねにバトっており、そのバトルの勢いにやられちまう奴が精神の患者である。本能のほうをうまく抑圧、あるいは方向転換することを学習すれば精神障害を克服できるって寸法だ(なおここで言う本能のことをイド、道徳のことを超自我、イドを御する学習のことを昇華と呼ぶ)。ワトソンたちは行動主義者という。人間も所詮はひとつの動物であり、本能だの道徳だのは結局行動に帰結するって感じ。「人格とは習慣の体系の最終産物に過ぎない」って言葉に象徴される。
二勢力は人間の積極的側面を無視し、人間の本能や動物的側面を悪として扱い、それを制することに焦点を当てていた。また、人間を客観的に観察するばかりで主観的な方法は取らなかった。マズローはそれらの真逆の方法をとっており、第三勢力と称されることになった。

そんでマズローがとった研究方法はというと、めっちゃステキな人間のことを研究し、そういう連中の特徴から精神的健康になる方法を割り出そうっていうものであった。そのめっちゃステキな人間のことは「自己実現した人間」とか「完全な人間性」という。自己実現した人間の特徴は以下である。
  • 世界を、自分が望むようなものとしてではなく、あるがままの姿で見る能力がある。自分の期待や願望によって自分の見解を曲げることがない。
  • 混乱した現実を、より速く正確に見極める能力がある。ゆえに決断力に富む。
  • 重要とみなす仕事、課業、義務に専念する。そのため、仕事と遊びの区別は曖昧になっている。
  • 抑制的ではなく、自分の感情や思考を偽ったり不自然な役割を務めたりする必要を感じない。
  • 他人の批判や嘲笑を無視できる能力、自分を取り巻く文化に抵抗できる能力が高い。たとえ一般の意見と対立しても、自分自身の決断を下す。
  • 勇気があり、物事をあまり恐れないので、馬鹿げた誤ちを犯すことを決していとわない。
  • 善悪の対立に興味が無く、つねにすぐれた価値のみを選び好む。善悪の二分法は自分に満足していない平均人にだけ見られる。
  • 自分自身への健康な敬意、つまり自分は有能かつ適任であるという、知識に基づいた敬意を持っている。
  • 他人に依存することが少ないので、他人に対して不安、敵意を抱いたり、他人の賞賛や情愛を求めることも少ない。
  • 他人に対して卑劣でケチなことはまずありえない。他人の長所をほめ、欠点は無視できる。
  • 平均人は欠乏によって動機づけられているのに対し、彼らは自己の可能性と能力を完全に発達させ実現したいという欲求によって動機づけられている。

人間はつねに何かを欲求している欠乏動物であり、何か基本的な欲求が満たされれば、高次の欲求を満たそうとする。欲求は階層構造をつくり、もっとも低次の「生理的欲求、安全の欲求」という基本的欲求の上に「愛、集団所属の欲求」、「自尊心、尊敬の欲求」が重なり、さらにその高次に成長欲求が並ぶ。もっとも高次に自己実現が存在する。とくにもっとも低次の基本的欲求は重要で、これが満たされない人間は精神病理的な兆候を示すようになる。 まあつまり、この階層を下からキチンと満たしていけば、いつのまにか精神的にちょー健康的な自己実現した人間になってるってわけだ。なおこの欲求階層ってのは別に、下層が100%満たされないと高次に進めないってわけではない。

逆に、かなり自由なアメリカ社会においてさえも自己実現する人間が少数である理由が以下。
  • 成長への人間の本能はじつは弱い。
  • フロイトや多くのクリスチャン理論化のせいで、人間の本能は悪いもので、それを制御し否定する動機を、肯定する動機よりも強調する文化を我々はもっている。
  • 大人たちは、自身の能力や可能性がより大きくなることを疑い、恐れる傾向をもつ。それはヨナコンプレックスという。
  • 自己実現する人間は平均人よりも柔軟で新しい考えや経験に対して開放的であるが、逆に習慣は成長の阻害である。ほとんどの人々は習慣を保ち続けようとする強い傾向を現す。



みどりんのことじゃん! なんだー、言ってくれたら俺のことも観察してくれてよかったのに、マズローさん! 欲求階層のことはもとから知ってたけれど、それが自己実現した連中を観察して発見されたものだってことは初知りだったね。悪いところを治していこうってんじゃなくて、もともと完璧な連中を目指せば根治になるじゃん! っていう方向性は俺の好みでもあり、読みやすかったよ。やっぱ下じゃなくて上をみないとね、空のさらに向こうらへんをね。