妹の紹介でアニメ版を観たのだけれど、不覚にも感動してしまい、原作をコンプしてしまった。アドレットの人間性は素晴らしいし、フレミーの心変わり(というかなんというか)の描写も素敵だと思った。全体のサマリーを書くのでネタバレに注意。



あとエンディングが魅力的だった。正味、第一話のEDを観た時点で惚れ込んだところがある。


一巻
    幼いころの恨みから凶魔と魔神を憎むアドレットは、運命の神に六花の勇者として選ばれた。アドレットは他の勇者たちと合流しつつ魔神を倒すため魔哭領へ向かう。しかし合流が済んでみれば、全部で六人であるはずの六花の勇者は七人集まっていた。彼らは誰か一人偽物の勇者、七人目がいることに気づき疑心暗鬼に陥る。そのうえ七人目が発動させた霧の結界が彼らを閉じ込めてしまう。状況的に、結界を発動できたのはアドレットだけであることから彼は嫌疑をかけられる。が、七人目を始末するべく追ってくる仲間たちから逃げつつ、アドレットは真の七人目の策略を暴くことに成功する。ようやく突き止めた七人目、ナッシェタニアの逃走は許してしまったものの、ついに六花の勇者は集結することができた…。と思いきやさらにもうひとりの六花の紋章を持った勇者が現れてしまう。どういうことなの。
二巻
    偽物をひとり抱えた七人の六花パーティは、とりあえずその問題は置き魔哭領への進撃を開始する。最初の目標は運命の聖者が魔哭領内に作った聖域、「永の蕾」まで到達することである。その裏で六花のひとりモーラは凶魔の総領のひとりテグネウにもちかけられていた取引のことで頭が一杯であった。それは、娘の命と引き換えに六花のひとりを殺害せよというもの。その取引から逃れるにはテグネウを殺すしかない。モーラは世界を救う勇者のひとりとして、そしてひとりの母親として懸命にテグネウの命を狙う。しかし、いざ姿を現したテグネウは知略と戦闘能力を兼ね備えた強敵であった。どうしてもテグネウを倒すことが出来ず、モーラはとうとう仲間を手にかけてしまう。ただしモーラは同時に、その仲間を蘇生させることにも成功する。その行動だけはテグネウの予想外であり、取引は成立しモーラの娘は開放された。今回ばかりはテグネウの策を乗り越えることができたが、彼がこの先も罠を仕組んでいることは明白。さてどうなることやら。
三巻
    六花の一人であるゴルドフは道を見失っていた。仕える主であったナッシェタニアが最初の七人目であり、魔神を倒さんとする自分の敵だと知ってしまったからである。魔哭領を歩む途中でナッシェタニアが囚われの身になったという知らせが届く。ゴルドフはすぐに救出へ向かい、他の仲間たちも後を追う。しかしそれはテグネウがナッシェタニアを利用して張った罠であった。仲間のひとりは重症を受け、彼らはそれをナッシェタニアの仕業だと断ずる。しかし彼女の仲間の凶魔ドズーにより、ゴルドフだけは真実を知ることができる。彼は仲間と離れ、単独でナッシェタニアを助けだすことを決意する。それを裏切りとみた六花たちはゴルドフを七人目と考え戦いになってしまう。そんな中でゴルドフは辛くもナッシェタニアを救い出す。真実が明かされすべてテグネウの手の内だったことを知り苦虫を噛み潰すアドレットに、ドズーとナッシェタニアは打倒テグネウ同盟を持ちかける。
四巻
    アドレットたちは同盟を組んだドズーたちからテグネウの切り札について知らされる。正体は不明だが、それは黒の徒花というらしい。その名から不吉さを覚えた一行は、その手がかりが残されているかもしれないという神殿へ向かう。しかしテグネウの配下によって屍兵へと変えられた人々に行く手を阻まれる。その人々は、アドレットの故郷の人々であった。彼らを救いたいという悲痛な気持ちを抑え、アドレットは神殿への道を急ごうとする。ただ、彼の過去と故郷の人々への思いを知る幼馴染のロロニアだけは屍兵を救うべく奔走する。「屍兵は操られているだけで死んではいない」と主張するロロニアだが、その姿は六花の使命への裏切りと捉えられ、一行から責められてしまう。だがロロニアは正しかった。心が生きていた屍兵をすんでのところで見つけ出したアドレットは彼から黒の徒花の正体を知る。それは六花の紋章の力を吸収する人型の聖具であり、その特徴は、六花のひとり、フレミーのものと酷似していた。
五巻
    フレミーは黒の徒花。その情報は隠しながらアドレットは仲間と共に運命の神殿へ向かう。神殿には運命の聖者のミイラと、黒の徒花の設計図の一部が残されていた。黒の徒花は運命の聖者の力を奪い、テグネウが作ったものだったのだ。それを止めるには徒花を壊すか、テグネウを殺すしかない。そこで設計図を見たフレミーは自らが徒花であることに気づいてしまう。哀れに思いつつもフレミーを殺す決意をかためる六花たちだったが、アドレットだけは命を懸けて彼女を守ろうとする。アドレットはフレミーを愛しており、仲間たちと戦うことになっても守り切ると決めたのだ。その態度は世界を救う使命を負った六花の勇者とは程遠い。六花は彼を七人目と断定し、四面楚歌の苦境に陥るアドレットだが、それを見た凶魔たちもまた彼を七人目だと判じた。アドレットは凶魔たちを騙し協力して、六花の仲間たちを欺きフレミーを殺すことは危険だと思い込ませ、かつ自分は七人目ではないと信じさせた。いまだ疑いを向ける仲間たちはいるものの、一行はテグネウを倒すべく歩を進める。その頃テグネウは、自分が心を操り七人目に仕立てあげた、アドレットの有能さに大満足であった。
六巻
    とうとう六花とテグネウ舞台の決戦が幕を開ける。六花一行は全力でテグネウの居場所を探り、テグネウの方は心を操作しフレミーを愛するよう仕向けたアドレットと、そのアドレットに惹かれているフレミーを見て愉悦に浸っていた。彼の目的は、愛が起こす奇跡を見、そしてその愛が偽物だったと知ったときの彼らの顔を拝むことである。なんという悪役の中の悪役。六花たちにとって最悪なのはテグネウが逃亡してしまい黒の徒花を破壊できないことだが、テグネウの望みは愛の力を正面から叩き潰すことである。不合理な戦法であっても、テグネウはそういう存在であった。アドレットは心を操られ翻弄されつつも、愛の力でテグネウを打倒することに成功する。しかしその瞬間テグネウの力は消散し、これまでずっと自分を突き動かしてきたフレミーへの愛を、アドレットはもうまったく感じられなくなってしまった。フレミーは悲しみ、アドレットは絶望する。まだ魔神への道のりは遠く、強敵は残っているのに大丈夫なのだろうか。


テグネウ関連の伏線とその回収がすごい。冒頭で「アドレットの人間性は素晴らしい」とか書いたけれど、それはそもそもテグネウに植え付けられたものであり、テグネウの死とともに崩壊してしまうという台無し感。才能の無さを愛の力だけで補っていたアドレットが、愛の力なしにこれからどうしていくのかマジで幸先不安だ。彼の村が滅んだことも彼のトラウマも結局すべてテグネウのせいだったし、もう何なのお前。アドレットがテグネウを握りつぶすとき、俺まで息を吐いちまったよ。あんなに「生かしといたらヤバイ」「一言でも喋らせるな」感のある敵はそうそう見ない。